「好き」をあなたに。

「青」幼馴染みは隠し上手。 ページ4

Main __ F.Ryusei







「藤井先輩、ボタンください！」

「んえ、あ、はい」





次々と押し寄せる人の波。

本当なら私も参加したいところだけれど、キャラじゃないしやめておく。


何より、昨日まであった二番目のボタンは、今日の朝会ったときからなかったから。

その時点でもう脈なしって理解。





「お前第二ボタンは？」

「えー、妹にあげた」





僻みとも取れそうな顔でそう冷やかす男子。

そんな彼を気にもしないで、笑って答える。


好きな人、いないんだ。

なんて勝手に思ってみるけど、やっぱりいそうだな、なんて百面相になる。





「A、帰るで」

『あ、うん』





祝賀会も終わって、やっと下校。

いや、下校って言わないか。





『流星、後輩にもモテてたじゃん』

「名前知らん子ばっかりやった」

『いいなあ、私もモテてみたい』





そう言ってみると、急に足を止めるから。

彼の二、三歩先に行ってしまう。


いつの間にか抜かされた背。

私の方が高かった時期もあったけど、流星の方がもう断然高い。


幼馴染みっていう肩書きは、私にとって、流星と唯一繋がれる架け橋で。

卒業は少し寂しくもある。





『どうかした？』

「Aはさ」

『うん』

「告白した？」





顔を上げたかと思えば、そんな質問。

できない。なんてこと言えないから、少し笑いながら首を横に振った。


私につられたその顔は、久しぶりに見た、あどけない笑顔だった。





『流星は告白したの？
ていうか、そもそも好きな人いる？』

「してへん。おるよ」

『え、いるの？初めて聞いた』

「言ってへんもん」





お互いの進路も違うから、こんなに笑い合えるのも、きっと最後かな。

そう思うと、悲しくなってくる。


まだ、流星と一緒にいたいのに。





『誰？』

「教えへん」

『いいじゃん。もう卒業したんだから』

「はあ？」




なんやねんその理由。


あまりに笑いながらそう言うから、私も思わず笑顔になる。





『ふふ、私も分かんない』





そう言って、歩き出す。


目の前に伸びる自分の影が、どんどん後ろの長い影に追い抜かされていく。

開いた身長差に少し、ドキッとした。





「さっきの話やけど」

「お前にやるわ。これ」





手を取られて、何かを握らされる。

コロンと転がったそれは、彼からの贈り物。



照れたのか、先を急ぐ彼に駆け寄る。


前よりも近くなった距離に、二人で顔を赤くした。






___Fin

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