おはよう、今日も好きです。《赤》

#16 好きだよ、重岡。 ページ16

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『…っ、私の、ばかっ、』





追いかけてくる音にも気づかないくらい、ただひたすらに泣き続けた。


ねえ、私の足。なんでこの場所に来ちゃったの？
ねえ、私自身。なんで重岡じゃなきゃ、嫌なの？

答えは簡単。やっぱり、好きだから。





「A…」

『っ、』





ふいに後ろからふわりと包まれる。

なんで、どうして、私の体はすぐに彼だと分かってしまうんだろう。



お腹と首に回された男の子っぽい腕が。
肩にうずめられる彼の頭が。
私の涙を止めるくらい大好きな香りが。

こんなにも私の心臓を奪い取ろうとすること。

あなたは、分かってる？





「ごめん、ほんまに…お前のせいちゃうねん。
ほんまにちゃうから、信じて」

『…もう、いいよ』





抱き締められていた腕をそっと離して、彼の方に向き直る。

もちろん、俯いて。





『もう、いいよ。疲れた』





困らせたくない。
そんな顔、させたくないのに。

私の口は、止まるという動作を忘れたかのように心の奥底の気持ちを紡ぎ出していく。


嫌だ、止まってよ。こんなこと思ってない。
重岡にそんな顔させたくない。

お願いだから、もうやめて。

もう、嫌われることは散々なんだって。





『何度言っても届かない。
どれだけ表現したって伝わらない。
こんな私の気持ちが、重岡に分かる？』

「そ、れは…」

『辛くて、悔しくて、何回も泣いた。
そりゃ結には叶わないよ。…私だもん。
でも、それでも気持ちくらい受け取ってほしかった』

「ごめん…っ、やけどっ」

『重岡に、今さらなにが分かるっていうの』





ああ、ほら。
止まるってことを思い出さないから。

嫌われちゃったな。


「好き」って伝えることさえ、もうできない。





『帰って、どっか行ってよ。もう…見たくない』

「っ、…分かった」





ねえ、やだよ。


離れていかないで。そばにいて。

違う、そんなこと思ってない。
見たくないなんて、思ってないから。


まだ嫌われたくない。まだ話したい。まだ会いたい。

まだ、好きでいたいのに。



気づいてよ、バカ。





『しげ、おかっ、』





好きで好きで、大好きなんだって。

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