2.茶色の外套の男★ ページ6
「…駄目っっっ!!!」
すぐに姉が動き出し、その男のコートを掴んでいた。
広く大きなコートのお陰で川へ足を進めることは無く、踏みとどまった。
そしてすぐにコチラを見つめていた。
(い、今…)
____この男、川に入ろうとしてた?
感情が追いつかないまま、僕はその男に口を開けた。
彼は何処か暗い顔をしていた。
『お、おいっ!お前、何してるんだ?』
すると茶色の外套の男はしばらく僕と姉を見つめた。
姉弟だと理解したのか、コテン、と子供のように首を傾げた。
「…何故、止めるのだい?」
本当に不思議そうにそう言っていた。
思わず顔を歪めると共に、そっと姉は手を離していた。
__目の前で平気で死のうとする様子。
(止められて、不機嫌?)
『お前、まさかジサツ願望者か?』
そう言い当てると、ピクッ、と相手は僕を見つめた。
そして目を細められ観察するようにコチラを見ては「ふーん」と口を開けていた。
すると隣で姉は「ええっ!?」と驚いていた。
「あ、私達は目の前で、人が死なれては困るから!!優馬も…優馬も私と同じ気持ちなんだよ!!」
『……』
隣で姉は元気にそう言った。
すると彼の自然と目線は姉に向き見つめていた。
だが、目を輝かせ、サラッと姉の手を取り、まるで見惚れた役者のようにウットリとした顔を見せていた。
「???」
「嗚呼っ、なんて美しい女性だ!どうか私と心中してくれないかい?」
「へ?」
(おいおい、お姉ちゃんよりヤバいやつだ…)
姉はヒドく戸惑っていた。
元気な姉がここまで固まるのは中々無い珍しいこと。
僕は繋いだ手を引きちぎった。
バチッ、と手を叩き払い、2人の間を制すように男を睨んだ。
『お姉ちゃんに変なこと教えないでください』
「おやおや、シスコンかい?」
『違うし…変な奴が居たら誰だって離れるだろ!そもそもお前は誰なんだ!』
(危険なやつは近づかせない!)
ギギギっと睨むと、彼はキョトンとしていた。
そして払われた手をポケットに入れ、僕達を見ては微笑んだ。
「あれ?言ってなかったっけ?まぁいいや」
____私は太宰、太宰治だ
そう自己紹介する彼の周りには軽く風が吹いた。
真上にある太陽が逆行により、なんだか輝いて見えた
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せんら(プロフ) - わさびのりさん» 面白いといって頂き、光栄の極みです!ありがとうございます! (2019年8月22日 15時) (レス) id: 1e2db71dc0 (このIDを非表示/違反報告)
文ストlove(プロフ) - わさびのりさん» ありがとうございます!面白いっていっていただぎありがとうございます (2019年8月22日 15時) (レス) id: 8ea6342afd (このIDを非表示/違反報告)
わさびのり(プロフ) - 面白い!更新頑張れ! (2019年8月22日 13時) (レス) id: 5cca7cd247 (このIDを非表示/違反報告)
せんら(プロフ) - 紅生姜さん» 有り難うございます!更新がんばります。 (2019年8月5日 19時) (レス) id: 1e2db71dc0 (このIDを非表示/違反報告)
文ストlove(プロフ) - 紅生姜さん» ありがとうございます!次回原作入る!笑笑 (2019年8月5日 12時) (レス) id: 8ea6342afd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シグマざん& せんら x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2019年8月2日 7時