その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ37)

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　俺は頭を上げ、相澤先生にチラリと目線を向け、言葉を返す。

「でも、俺が言っていればこんなことには……相澤先生や13号先生に怪我を負わせることも――」
「生徒を守るのは教師として当然のことだ。その生徒に怪我を負わせたのは俺たち教師だ。こちらこそ、すまなかった」

　相澤先生は言葉を被せ、頭を下げてきた。

「……でも――」

　口を開こうとすると、オールマイトが優しく言葉を掛けてくれる。

「もし来ると知っていたとしても、必ずしも防げるとは限らない。下手に警戒をして、事態を悪化させる可能性だってあった。君が負い目を感じる必要はないよ」
「……でも俺は、校長との約束を破りました。それは事実です」

　根津校長が静かに口を開く。

「言った場合のリスクと天秤にかけて、言うべきではないと思ったんだろう？次から我々を頼ってくれれば、それでいいのさ」
「そうだ。それに、お前がいてくれなきゃ、俺はもっと怪我を負ってただろうしな」
「……はい」

　少し重い空気の中、先生たちは雄英へ戻った。
　俺は明日から登校することになった。

――

　翌日。

　教室のドアを開けると、みんなの視線が一斉に向いた。

「「「鳶嵩！！」」」
「ひ、久しぶり……」

　驚きのあまりその場に立ち尽くすと、切島が口を開きながら近づいてくる。

「鳶嵩ー！もう大丈夫なのか？相澤先生みたいにミイラマンじゃねぇんだな！」
「……俺は怪我より、疲労のせいで目が覚めなかっただけだから。今は少し痛むだけだよ」

　切島にそう言葉を返すと、緑谷と峰田、蛙吹が声を掛けくる。

「鳶嵩くん、ありがとうね」
「鳶嵩！ありがとな！」
「鳶嵩ちゃん、ありがとう」

　突然向けられた感謝の言葉に困惑していると、みんなも次々に感謝を述べてくる。

「え、いや、俺は――」

　――むしろみんなを危険な目に合わせたのに。

　そう考えていると、瀬呂が口を開く。

「お前がモヤの男と何があったのかは知んねぇけどよ、お前は俺らを守ってくれた。オールマイトが来るまでお前がヴィランの相手をしてくれてなきゃ、今頃俺らだってどうなってたか分かんねぇ。だから、ありがとうな、鳶嵩」

　瀬呂に続いて、芦戸が口を開いた。

「そうだよー！鳶嵩のおかげで飯田が先生方を呼びに行けたんだし！ありがとうだよー！」

　涙を堪えながら、言葉を紡ぐ。

「みんな……無事で、良かった……」

　――俺はコイツ等を守りたい。この身がどうなろうと。