その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ26)

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　一瞬の考え事で気が抜けたのが、はたまた体の限界が近いのか。

　わずかにガードが遅れ、脳無の拳が直撃した。

「ガハッ……」

　俺は派手に吹き飛ばされ、壁に強く打ち付けられた。壁に体重を預けながらなんとか立ち上がると、後ろで扉が壊れる音がした。

「「「オールマイト！！」」」

　研ぎ澄まされた耳がみんなの声を拾う。
　……やっと来た、平和の象徴。

「嫌な予感がしてね。校長のお話を振り切ってやってきたよ。来る途中で飯田少年とすれ違って、何が起きているかあらまし聞いた。……もう大丈夫。私が来た」
「待ったよヒーロー。社会のゴミめ」

　死柄木は嬉しそうにそう言った。

　気が付くと、俺を庇うようにして、目の前にオールマイトが立っていた。

「鳶嵩少年、待たせてすまない」
「遅いですよ、オールマイト……あとは頼みます」
「……ああ」

　ここにいると足手まといになる。

　俺は力を少し治めて翼を広げて羽ばたき、オールマイトと脳無を眼下に、フラフラと入り口へ飛ぶ。

　失速しながらもギリギリ届き、地面に伏す。

「鳶嵩ちゃん、大丈夫？」

　そう言って蛙吹が手を引いて、起きるのを手伝ってくれた。俺は一息ついて言葉を返す。

「ああ、何とか。ありがとう」

　そう言って、横たわっている相澤先生の方へフラつきながら歩く。

「鳶嵩、お前――」
「あ、意識はあるんですね。よかった」

　そう言いながら相澤先生の横に腰を下ろし、言葉を続ける。

「その肘、敵の個性ですか？」
「恐らくな。手のヤツに触れられたと思ったら、ボロボロと崩れやがった」
「死柄木の個性か……」

　俺はそう言って、オールマイトの方に目を向ける。すると遠くの方で何かが動くのが見えた。俺は目を凝らす。

「っ！アイツ……！」

　吹き飛ばした黒霧が、フラフラと歩いていた。
　嫌な汗が背中を伝う。

　俺は何とか立ち上がり、翼を広げる。

「鳶嵩、お前もう――」
「……大丈夫、先生よりは動ける」

　そう言って羽ばたき、残り僅かな力で黒霧の方へ加速する。

「させねぇよ」

　黒霧の実態を蹴り、地面に叩きつける。
　そして実態部分に座り、言葉を続ける。

「死柄木が、平和の象徴を殺すって言ってたろ。どういう算段なのか少し考えてみたんだ」

　黒霧が何かをしてくる様子は見られない。
　俺はそのまま言葉を続ける。