24話 ページ25
「千堂はここにいるんですか？」
「うん。今はここのキャバの経営任されてるって」
信じたくないと首を横に振ると、直人が心配そうに私を見た。
「……大丈夫ですか？そんな所にのこのこ行って。今の千堂は東卍の幹部なんですよ？」
「バカだなー、直人は。友情ってのはそう、簡単に壊れねーんだよ！」
アッくんの言葉を思い出して笑顔で言う。直人の言葉も聞かずに、私は扉を開けた。
「いらっしゃいませ！！ご指名は！？」
「うっわー、綺麗な姉ちゃんばっか」
「何おっさんみたいなこと言ってるんですか」
私はハッとする。やっべ、めっちゃ素でた。……まあいっか。
「ねえ、私さ、アッくん……あ、千堂敦ね？その人とここで会う約束してるんだけど、アッくんからなんか聞いてる？あ、名前は花垣Aね」
「君が？ウチの社長と？面接じゃなくて？」
ああ、仕事なくなったらキャバでもすっか。いや、もう佐野の世話にでもなろっかな。……いや、ダメだわ。あっぶね。道見失うとこだった。
「オイ！なんかみすぼらしーの来てっけど、社長ってアポある？」
失礼だなおい。つか、直人、笑いこらえてんのバレてんぞ？？
「なんだもー、言ってくださいよ花垣さーん」
あったんかい。ちゃんと中で連絡取り合っとけよオラ。東卍も甘いな、ボケ。
「社長の親友ならすぐにでもお通ししたのにー」
嘘つけボケ。
「VIP2名様ご案内━━！」
「絶対馬鹿にしてるよね？」
「そんなことナイデスヨ」
ならまず片言なおせよ。
◆
VIPの部屋に通され、私と直人はソファに座る。
「だだ、大丈夫！どんなに身分が違ったって、どんなに偉くなったって、アッくんはアッくんさ……うん」
自分の手がカタカタ震えてるのが分かる。水こぼれそう。でも、動かしたら大惨事になりそう。
「緊張しすぎじゃないですか？」
「オマエ、ヒナが反社になって久々に会うってなったら、緊張しない？」
「まず、失神が先ですね」
「やべ、私も失神しよっかな」
「落ち着いてください」
そうだね。ヒッヒッフーだわ。
「ヒッヒッ」
「A」
「フワあ！？！？」
驚いて変な声が出た。私、ちゃんと女だったわ。
「Aさん……」
笑うな直人。
「相変わらずだな、A。元気でバカやってるか？」
「ひっどいなあ」
声がした方を向けば、腕に刺青が入り、昔のアッくんの面影などまるでないような男がそこにいた。
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作者名：くー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Qoo01411/
作成日時：2022年7月4日 20時
