夕焼けと憂鬱

5.行動 ページ11

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伊沢さんたちに相談してから数日は授業が無かったため、大学には行かずにひたすら思考を回していた。
とりあえず僕が出来ることは、彼女と言葉を交わして真意を聞くことしかないという考えに至った。

Aさんと屋上で会ってから実に4日が経っている。
そこにいる確証はないのに、僕は日が傾いて暗くなる前に、またあの屋上に上がった。

ドアを開けて屋上に出ると、会いたかった人は広い空間のちょうど真ん中くらいの所に立っていた。



『…端にいないってことは、今日は飛び下りるつもりは無いの？』
｢え、また来たんですか｣
『うん。ここから飛び降りて欲しくないし、Aさんがここに来る理由を知りたいから』
｢理由なんて、好奇心だけだって前に言ったはずですよ｣



やっぱりなんの感情も無いような瞳で、ほとんど表情を変えずに話すAさん。立っている場所から動かないのを見て、僕は少しずつ歩いて近づきながら質問をしていく。



『この前、Aさんの下の名前聞き忘れたなって思って。名前はなんて言うの？』
｢…はぁ、藍です｣
『愛情の愛っていう字？』
｢いえ、藍色の藍です｣



A藍さん。漢字までしっかり聞けると正確に覚えられる。
その場から1歩も動かないAさんの真横に立ち、同じ方向を見てみる。周りをフェンスに囲まれる何とも奇妙な場所だ。



『ここから何を見ているの？』
｢…色です｣
『色？』
｢日によって全然違う色を、同じ場所から見てる｣
『それはどうして？』
｢…色は、人によって見方が変わっていいものだから｣

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