Call me back again【短編集】

Myosotis -izw ページ17

*


朝から仕事で都内を転々とし、落ち着いたところで帰路につく20:00。
帰路といっても帰る先はオフィスで、今日はゆっくりサッカー観戦できるかな、なんて思いながら歩いているところに、ふと小さい花屋が目に入った。
……正確には、花屋の女性店員さんに目を引かれた。


どこかで見たことあるような、気のせいなような。
分からないが、気付いたら足がお店の方に向かっていた。
お店に入ると、色鮮やかな花に包まれる。ふわっといい香りが鼻を掠めた。



『こんばんは、いらっしゃいませ』

｢あ、こんばんは…｣



店員さんに挨拶をされたが、ピンとくるような感じは無い。人違いだったか…。
落胆しながらも、せっかく入った花屋を少し見て回ることにした。


クリスマスシーズンだからか、濃い鮮やかな色の花が多く、見栄えもとても綺麗なものが並んでいる。どれも綺麗だが、奥の方にプリザーブドフラワーのコーナーがあって、そちらに目を向けていると、小ぶりな可愛らしい花を見つけた。



｢これ…｣

『勿忘草(わすれなぐさ)ですね。花になる時期が短いので、プリザーブドフラワーの中でも人気なんですよ』



後ろから優しい声で話しかけられ、思わずドキッとする。勿忘草についての知識だったらいくらでも語れるのに、その声につい耳を傾けてしまう。



『基本的に色はブルー系ですけど、白やピンクになる事もあるんですよ』

｢小さいのに、とても綺麗ですね。実際見たのは初めてかもしれないです｣

『そうでしたか。派手すぎないお部屋の飾りにもおすすめです』



自然で穏やかな笑顔は、普通に人と会話をして感じる嬉しいや楽しいとは違う感情を覚えさせて。それがどんな意味かに気付かないほど俺も鈍感ではない。
普段なら持ってる知識を使って会話を弾ませるところだが、次にどう切り出せばいいか分からないでいると、



『あの、違ってたらごめんなさい。テレビとか出ていらっしゃる伊沢さんですよね…？』

次ページ→←前ページ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す