24 side:中原 ページ24
泣いていたことが恥ずかしくなったのか、Aは顔を洗ってお茶を淹れ直してくると部屋の奥へと行ってしまった。
なんでだろうな…、名前を呼ばれたその時から、Aの存在が気になってしょうがない。
なぜだか、あいつの笑顔を曇らせてはいけないと思った。
一瞬異能力かとも思ったが、姐さんには事前に異能力を持たない一般人であるということを聞いている。
ここがマフィアの本拠地であることも知らないらしい。
会う前までは、なんでそんな奴がここにいるんだとも思ったが、今なら分かる。
近くにいた方が守りやすい。
しかし、Aの側にいたあの
厄介な“カミサマ”だと。
Aもそう言っていたが、はっきり言って信じられるものではない。
「カミサマなんているわけねーだろ…。」
ぽつりと自分自身に対して呟く。
「そうですね、僕らは主君の神様であって、貴方の神様ではないですから。」
突然聞こえた声にバッと後ろを向けば、前田と呼ばれていたアイツがいた。
気配を全く感じなかった。
「そんな警戒しなくても大丈夫ですよ。
挨拶がまだでしたね、前田藤四郎と申します。主君の刀であり、刀の付喪神です。」
「……。」
「確か…中原殿、でしたよね?
僕、貴方にお礼がしたかったんですよ。」
「…礼…?」
怪訝そうな視線を向ければ、一つにこりと笑顔を向けてきた。
「主君の憂いを一つ払ってくれてありがとうございました。」
そう言って頭を下げた目の前の存在。
しかし、頭を上げたソイツと目が合った瞬間、俺は動けなくなった。
「…っ…どう見ても、感謝しているっていう目じゃねーよ…その憎悪の視線はよ…!」
「…いえ、感謝はしているんですよ、本当に。
ただ、主君がなぜ中原殿には心を開いたのかが謎だったので…。」
僕らには何も言ってくれなかったのにと悲し気に呟くコイツは、人間よりもよっぽど人間らしい、そう思った。
「…だから、だろ。」
「?」
「近すぎると、話せないことも出てくるんだろ…。」
「人の子とは、そのようなものですか…?」
ふと体の自由がきくようになった。
「…中原殿は、少し僕の兄と似ています。」
「あに…?」
「ええ、男前でとても兄貴肌で…。
ああ、だからでしょうか…?主君が心を開いたのは…。」
それだけ言うと、前田は短刀を一振りテーブルに置いて立ち上がった。
「主君にこの短刀を渡しておいてください。
僕は暫くの間、外の世界を偵察してきますので。」
1078人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Hi! - はじめのエリスちゃんの言葉にやられました。好きです! (2019年7月14日 23時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
しの - マッジで面白いねんけど 更新待ってますね (2019年7月12日 0時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - わさまんさん» それに気が付くとは…。知られたからには…。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - silentさん» ありがとうございます。いいことがあって悪いことがあったら次はまたいいことが来ますよ。例えば賽子6・6とか。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - KISH○W推し(女)さん» ちゅやはいいぞ。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カノン | 作成日時:2019年6月6日 19時