劣等少女の病名【2】 (ページ2)

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49.一歩ずつの話ページ2

骸さんは、私が優しいから撃てないのだと言った。けどそんなことはない。私は優しくなんてないんだ。もし、この恐れが人を傷付けることだったなら、人並みの優しさがあったかも知れない。でも私が怖かったのは、もっと別のことだった。ぎゅっと握った手に力はない。

｢……撃ったら、私じゃなくなる気がしたんです。もう、撃つ前の私に、戻れない気がして……怖かった｣

誰かを傷つける快感を知ってしまった、あの喧嘩の日。本能が今までの分をやり返せば良いと。でも、骸さんのあの悲しい顔が頭から離れない。私は一歩間違えば骸さんと同じになる。いや、もう同じなのかも知れない。怒りや憎しみは忘れず、理性と記憶で上手く蓋をしているだけだ。

｢最近、目まぐるしくてだめですね。何もかも中途半端で、どうしようもない｣

｢どうしようもなくても、できることはある｣

小さい子供からの正論に苦笑いを返した。私よりよっぽど大人で、本質を見ている。結局のところそうなんだ。どれだけいっぱいいっぱいでも、できることから少しずつ崩していくしかない。……言うほど簡単でもないんだけどね。

｢あ、そう言えば、骸さんは？｣

｢アイツは元々脱獄囚だ。すぐに連れ戻されたぞ｣

｢……そう、ですよね。

あの、リボーンさん。私話さなければいけないことがあるんです。聞きたいことも、あるんです。だから、少々お時間、頂けますか？｣

ビアンキさんやシャマル先生が退室しようかと聞いてきたけど、首を横に振る。信用しているし、二人もマフィアと関係しているなら決して部外者ではないのだ。

母さんのことを全て話した。でも、何故私に薬を投与したのか。そもそもどうして子供なんて作ったのか、詳しいことは何も分からない。もしかしたら、父さんに聞けば何かわかるかもしれないけど……。今どこで何してるのかさえ、私には分からなかった。

｢なるほど、それならあの動きにも説明がつく。だが、勘違いすんじゃねぇぞ｣

｢？｣

｢お前、超がつくほどのネガティブだからな。何か成功するたび、薬のおかげだとか言うだろ｣

｢いや、そんなこと……｣

｢言うわね｣｢言うな｣｢言うだろ？｣

｢ハイ｣

｢制御ができなくなるのは感情に任せた時だけだ。それ以外は、全部自分の力だって忘れんな｣

全部、自分の力。私にそんな力があるんだろうか。……でも、天才じゃない私は、秀才になる努力を怠ったらいけないんだろう。そうじゃなきゃ強くなれないし、変わらないままだ。