34.大切なものの話 ページ36
｢山本さん、攻撃をしませんね｣
｢ああ。アイツは体を庇ってる。怪我を恐れてるみたいにな｣
たしか、山本さんは野球部所属だったはず。部活動の成績は良くて、一年でレギュラー入りしてるほどだ。大会も近いはずだし、だから身体を気にしているんだ。そりゃあ、こんな所で怪我をするわけにはいかない。
｢ああ、こんな所に山本を連れて来ちゃいけなかったんだ！｣
マフィアごっこ以外にも大切なものがあると語る山本さんに、私も沢田さんと同じ想いになった。私には理由があるけど、彼は。
｢そんなに心配なら、お前が行け｣
｢え、っうわぁぁあッ！｣
｢沢田さん！？｣
蹴られた沢田さんが下に落ちてしまった。しかも、山本さんからターゲット変えて襲いかかろうとしている。私が銃を向けたが、リボーンさんがその手を止めた。よく見ると、山本さんの手に小石が。
でも、今度はチーターのような速さで動く敵に、小石はことごとく避けられる。そして｢もらったぁッ！｣その勢いを落とすことなく、山本さんの腕に噛み付いた。
｢あっ！｣
｢山本！｣
もうダメかと思ったが、彼はいつの間にか右手に刀を持っている。｢そいつはお互い様だぜ！｣そう言って、柄の部分で相手を殴りつけた。敵はそのまま倒れて動かない。
あんなに体を気にしていた彼が
わざわざ左腕を犠牲にした。
それは一重に、
｢山本の腕が、俺を助けるために……。
ごめん！！山本！
俺のせいで、野球あんのにっ。大会あんのに！｣
｢おいおい、勘弁してくれよツナ。ダチより大事なものなんかないだろ｣
これが、きっと山本さんの覚悟。リボーンさんが沢田さんを突き落としたのは、山本さんの中の大事なものをハッキリさせるためだったのかもしれない。山本さんにとって、きっと野球は大切なものだ。でもそれ以上に、仲間が大切だった。
｢山本さん、強いです｣
大切なものと大切なものを天秤にかける。目に見える天秤と違って、心の天秤は答えるのが難しい。山本さんは窮地に立たされ、その中で答えを導き出した。そんな山本さんの精神力は、並外れている。
私も見習わなきゃな。
｢ご、獄寺さん。縄がそっちに、引き上げましょう｣
ちょっと怖い獄寺さんに声をかけて、縄を降ろす。一刻も早く骸の元へ。そして、雲雀さんを探さなきゃ。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
