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☆*。
『………ショッピは、さ』
「ん?」
『…なんで、私の付き合ってくれたの?』
赤くなる夕焼けに、遠ざかるカラスの声。
そんな少し湿った雰囲気に飲まれてしまったのだろうか。
私は普段なら絶対に聞かないであろうことを口にしてしまった。
…答えを聞くのが怖いから、今まで何も聞かずにすごしてきた。
これを聞いてしまったら、彼との関係が崩れてしまうような気がして、どこか怖くて。
ずっと聞くのを躊躇い続けていた、私の疑問。
彼はその言葉に綺麗なアメジストの瞳を瞬かせながら、不思議そうに首を傾げた。
「え、…なんでって…」
『だっておかしいじゃん。ショッピみたいな優等生が、私みたいな凡人を好きになるなんて。ありえないし。…だから私とずっと付き合ってるのって、なんか理由あんのかなって気になってさ』
そう言ってしまえば、隣の彼は押黙る。
動揺したように揺れる瞳に、嫌な予感が募っていった。
…まさか、本当に彼は私のことをなんとも思っていないのではないか。
私の告白されたから、その場のノリで付き合っただけなのではないか。
ただ彼に、遊ばれていただけなのではないか。
もう、彼の思いは、私に向いていないのではないか。
膨らんでいくネガティブ思考を慌てて振り払う。
彼を縋るように見つめていると、不意に私たちの視線が交差した。
呆れたように細められるアメジスト。
その鋭さに、私は一瞬息を飲んだ。
「……………気づいてなかったんすか?」
『…何、を?』
「俺の気持ち」
ドクドクと心臓が大きく波立つ。
震える唇をかみ締めて、両手を握りしめる。
…何だ、一体なんなんだ。
彼の気持ち?気づいていない?
あぁ、やっぱり…私は彼に、愛想、つかされて―――
「俺、あんたのことめっちゃ好きっすよ。初めて会った時から、ずっと」
『……え?』
しかし、彼の口から告げられるのは、予想もしていなかった衝撃の言葉。
ぽかんと間抜け面で見つめれば、面白そうに笑われた。
「楽しそうに笑う瞳も、怒ったように頬を膨らます顔も、真面目にノートに向かう姿も、全部好き。初めてA似合ったその日から、俺はあんたを好いていた。嫌いなところなんて、ひとつもあらへんくらいには」
至極当たり前のように、真っ直ぐな眼差しで言ってくるものだから。
先程までの雑念なんかどこかに容易く吹っ飛ばされて。
そこに残ったのは、顔を真っ赤に染めあげた瞳の恋する女だけだった。
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マーシャ(プロフ) - めるさん» 基本的にここにあげてるお話はツイッターで上げていたお話なので更新速度かとてつもない速さになってます笑。内容はフォロワーさんなどにリクエストとかいただいて書いてます! (2019年9月20日 20時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - 更新スピードの速さにびっくりしています…!お話のネタってどうやって考えているのですか? (2019年9月20日 17時) (レス) id: 00dabe47f6 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 名無しさん» ひょえ、ありがとうございます…!微妙なところで終わったので、気が向いたら続き書こうかな、と思ってます。 (2019年9月18日 23時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 猫の日の話がとても好きです (2019年9月18日 21時) (レス) id: 8e5d693f3e (このIDを非表示/違反報告)
ねおる(プロフ) - マーシャさん» そうなんですね・・・ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 0c3e920e49 (このIDを非表示/違反報告)
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