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「しまった、」そう思った時には、蜥蜴男は銃をこちらに向けていた。
「おいオマエ、そいつら仲間かァ?」
口元にねっとりとした笑みを浮かべ、蜥蜴男はクロに問いかける。クロは俺とチカをちらと見遣り、少し顔を強張らせた。「『仲間』だと言いたいが、危害を加えられてしまうのを恐れている」という感じだろうか。
「ハッ。マ、どっちでもイイけどよォ」
蜥蜴男は俺の方を睨み、一歩近付いた。
「テメェ、よくもこの俺を蹴りやがったな?」
お陰様で魔法を使う羽目になっちまった、と蜥蜴男はぼやく。
「……魔法?」
「俺の魔法は探し物に向いてんだよ」
一度会った相手の魔力を何処まででも追えるもんでね、と蜥蜴男はニタリと口の端を歪めた。
少し会っただけでどこまででも追いかけられるなんて、まるでストーカーみたいだ。でも、そう考えるとこの蜥蜴男を撒くのは無理ということか?
「ヒヒ…イイねェ、その自信満々な面が絶望に染まるその様はよォ!」
顔色の悪くなった俺を見て、蜥蜴男は更に粘着質に笑う。
「怖ェだろう?何時襲われるか分からないってモンは、何事にも変えられない程の恐怖だからなァ」
何がおかしいのか、蜥蜴男は意地が悪そうにニタニタと笑い、
「そこの女を売ってくれるんなら、オマエ等だけは見逃してやるよ」
特別にな、と蜥蜴男はクロを顎で指した。クロを、蜥蜴男に売る?何をされるか分からないのに?
「そんなの、」
「…ヒカル、私は構わない」
俺の言葉を遮り、静かにクロは言う。意を決したような表情だ。
「そんな事、出来るわけないだろ!」
次はクロに向かって言った。折角助かった命を、無駄に散らせるわけにはいかないだろ?!
「チ、仕方ねェ。皆殺しにしてやるよ!」
痺れを切らした蜥蜴男は、此方に向かってくる。どうする。どうやって助かる?どうしたら、この男を遠くにやれる?
『こいつを遠くに弾き飛ばしたい』
そう、強く思った瞬間、空気が動いた。
「え、」
それは突風となって蜥蜴男を強く弾き飛ばす。
「グエッ」
蜥蜴男は壁に頭をぶつけ、再び気を失った。
「ナナセすごい!二つも魔法が使えるなんて」
チカが興奮したように、俺に抱き付く。クロの方を見ると、クロは気絶した蜥蜴男を抱え上げていた。……意外と、力あるんだな。
「どこに連れて行くんだ?」
「気にするな。……もう、この男が追ってこないようにするだけだから」
にこ、とクロは微笑んだ。警察みたいなところに突き出すんだろうか。
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鬼灯(プロフ) - 先に言っておきます、主人公にムカつくのならば、私の考えた設定に見事ハマっております。この主人公、(あるいは数名の登場人物)には、少しイラつくような、不愉快になりそうな要素をいくつか混ぜ込んでおります。主人公の察しが鈍いのもそのせい。(もはや言い訳) (2020年11月28日 12時) (レス) id: 0ae018eaaf (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯(プロフ) - 蟻さん» コメントありがとうございます!頑張って完成させたいと思います。 (2020年9月27日 0時) (レス) id: 0ae018eaaf (このIDを非表示/違反報告)
蟻 - 続きが気になります! 時間がある時で大丈夫ですので無理のない更新頑張ってください (2020年9月26日 17時) (レス) id: 25e4f6e788 (このIDを非表示/違反報告)
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