394話 ページ29
「手が気持ちワリィ。洗いてぇ……」
便器の中に手を突っ込んだ不快感というものは相当だろう。
ザックは鍵を指先につまんだままバスルームの中を見回し、洗面台に近づく。蛇口を捻ってもうんともすんとも言わない洗面台にザックは舌打ちをし、そのまま奥のバスタブの方を振り向いた。
バスタブの前まで歩いていくザックにAがついて行くと、バスタブの中には中も見えなくなるほどの濁った水が溜まっていた。
「水があんのはあれだけかよ……」
「ザック、これすごい濁ってるけど」
「トイレよりかマシだ」
ザックは汚れた手をバスタブの中へと突っ込み。直後、「……あ！？」と叫んでその手を浴槽から引き抜いた。
「痛ってぇ！！」
「ザック！？」
「なんか噛みやがったぞ！？ なにがいんだよ！！」
ザックは血が薄らと滲む手を、再び浴槽の中に突っ込む。そのまま肩まで水に入れながら、バスタブの底の栓を引っこ抜いた。
濁った水が抜けて、水位が下がっていく。徐々に見えてきた浴槽の全貌、その中にいたのは小さな魚たちだった。
下顎が突き出した、ギザギザに尖った歯を持つ魚。濁った水の中に隠れていたこれらにザックは噛み付かれたのだろう。
ザックは一瞬あっけに取られて、水が無くなった浴槽の中でピチピチと跳ねる魚を呆然と眺めていたが、やがて「あ！？」と苛立ちを隠しきれぬ声を上げた。
「小せぇ魚のくせして歯がギザギザとか生意気かよ！ 魚は食うもんで、こっちが食われるもんじゃねぇんだ！」
少しズレた文句を跳ねる小魚に浴びせて、ザックは血まみれになってしまった手を苛立たしげに眺めた。
「おかげで手が血だらけじゃねぇか……」
「包帯もズタズタになってるよ……替えの包帯でも探そうか」
「……いらねぇ。これでもさっきよりマシだ、行くぞ」
相変わらず不潔なものを触るように鍵を指先につまんだまま、ザックはそそくさとバスルームを去っていく。
散々な目にあったのだ。しかもザックだけが。苛立つのも、さっさとここを出たいと思うのも仕方がない。
Aはちょっとした罪悪感を抱えながらもザックの後を追った。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます！そしてお返事が遅れて申し訳ありません……！ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします！ (2021年9月25日 2時) (
レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます！！楽しみに待っていました！夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください！！ (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2021年9月1日 16時
