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348話 ページ31




 一瞬、意識がとんで。
 気がつくと、地面に座り込んでいた。


 あぁ、わたし。
 ザックに、やられたんだ。


 とりとめのない思考で考える。虚ろに目を開き、顔を上げる。ぼんやりと眩む視界に、得意げな表情のザックがうつった。



「ザッ……ク………」



 引きつる喉から声を絞りだす。ザックを見ても、先ほどまでの殺意がわきたつことはなかった。おそらく、体力を使い果たしたのか。それとも、もう諦めてしまったのか。



「……なぁ、A。お前、なにウジウジしてんだよ」



 おもむろにザックが口を開いた。少しクリアになってきた視界の中で、どうやらザックは呆れたような顔になっていた。


 声を出すのが億劫だった。でも、何か言わないと。そう思った結果、開いた口からは声など出てこないで、空気だけが漏れた。



「なぁ、お前なにがしたいたんだよ。何回だって俺を殺すチャンスはあっただろうが。そのくせに躊躇して、逃げ出して……」



 ザックは一旦言葉を切った。



「なにがしたいんだよ」



 そして、もう一度きいた。


 Aは力の入らない全身をなんとか持ち上げると、ふらふらと立ち上がる。



「……殺したかった。殺して、全部なくなってほしかった……」



 自分が幼い頃からずっと抱え込んできた衝動。自分が嫌いなものを全て殺して、壊して。それで、全部なくなってしまえばいいと思っていた。


「でも、わたしは弱くて。弱いから、みんなに哀れまれて。弱いから、好き勝手に殴られて。弱いままじゃダメなんだ……強く、ならないと……だって、もう嫌だ……」



 自分の弱さが嫌いだった。言われるがままの、されるがままの自分が嫌いだった。だから、強くなりたいと願った。



「痛いのも、怖いのも、暗いのも、もう嫌だ……!」



 出てきた声は情けないほどに震えていた。訴えかけるかのように悲痛に響いたAの言葉をきいて、ザックは大きなため息をつく。



「お前、何言ってんだ」



 ザックが言い放った言葉にAは怯えたように顔を上げた。

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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください!  楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください!  楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時

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