346話 ページ29
────その時、Aが引き金を引くのには僅かな躊躇が見られた。その躊躇を、今度もザックは見逃さない。
ザックはにやりと笑うと、Aに一撃をくらわせる為に一気に足を踏み込んで、空中へ身を踊らせた。
(あっ……)
レイは飛び上がったザックを見て、身を固くした。銃弾を避けるなど、ザックにしかできない芸当だ。しかし、今、ザックは空中にいる。空中では撃たれた弾を避けることができない。そしてAは、正確に獲物を撃ち抜く銃の腕前を持つ。
それは射程範囲内。
撃てば、必ず当たる。
そして、Aもそのチャンスを逃すことは無い。Aが目を細めて、トリガーにかけた指先に力を込めた。
────しかし、狙いを定めたその瞬間、Aは再び躊躇した。
瞳が揺れる。
狙いがぶれる。
外すはずのない弾丸は、何も無い空間に向かって放たれた。
銃弾はザックのすぐ横をすり抜けて、また、後方に立っていたレイの耳すれすれの空間を切り裂いて、さらに後ろの壁にくい込む。Aが小さく息をのむ。その顔には信じられない、どうして、と言いたげな表情が浮かんでいた。
そしてザックは、Aの目の前でカマを振り上げていた。
「あ……」
Aが呆気に取られたようにザックを見上げる。その目には、死を恐れるような色が浮かんでいた。
命を刈り取る死神のごとくカマを振り上げたザックがAの目前に迫り、そのままカマを振り抜けばAの体は切り裂かれる。いつか、どこかの小鳥のように。
しかし、ザックがAを斬りつけることは無かった。直前でカマを回すと、その持ち手でAを打ち据えた。
あまりにも強烈で、優しい一撃だった。
Aの手の中から、銃が滑り落ちる。ザックが与えた衝撃は、相当なものだったらしい。一瞬意識を失ったらしいAはその場に崩れるかのように膝をついた。
そんなAを、ザックは少し得意げな顔で見下ろしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます！二度入ってしまったことはお気になさらず！一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです！ (2021年2月15日 22時) (
レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました（汗） (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです！ 次の展開にドキドキです！ 更新頑張ってください！ 楽しみに待ってます！ (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです！ 次の展開にドキドキです！ 更新頑張ってください！ 楽しみに待ってます！ (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます！まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……！？(？)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです！ (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リア | 作成日時：2020年7月13日 20時
