428話 ページ15
血だまりを目を細めて眺めながら、ザックは低い声で呟いた。
「……ここはあいつのフロアってことか……」
「…………」
「……じゃあ、ここの殺人鬼は……」
そこまで言いかかったザックが、口を噤む。何が真実なのかにはザックもおそらく気が付いている。ただそれが、彼にとって想像を超えるものだったがゆえに、声も出ない。
──このフロアは、レイそのものだ。ダニーが言い放った言葉を思い出す。
(ここのフロアの殺人鬼は……レイ)
実のところ、Aはその事実にはもうずっと前から気が付いていた。……気が付いてしまっていた。
ファミリーネームと、オルゴールの部屋の赤い糸を見てから、なんとなくわかってしまっていて。最後にレイのネームプレートを目にして、確信していた。
このフロアはレイのもので──数々の罠はレイがここを訪れた生贄を殺すものだったのだと。
真実を知られることがないまま、その罪をザックに知られることなく、綺麗な自分のまま殺されたかったのであろうレイの叫び。
『ザック、ねぇ、ザック! お願い、お願い……!お願い、殺して、早く殺して』
『お願い、今の私を──殺して』
『お願い──私の、神様なら!』
ザックが小さく舌打ちしたのが聞こえた。
「なァ、A。お前は、知っていたか?ここの殺人鬼が誰かって」
「いや。知らなかったよ。でも、このフロアに来てから気が付いた」
「……そーかよ」
どこか拗ねたような、不機嫌な口調でザックはそう返すと、破壊したテレビに背を向けた。見ている先は部屋の出口であるドアの方。そしておそらく今から向かう場所のことを考えている。
「いくぞ」
「うん」
明確に言わずとも、今から向かう場所は決まっていた。きっと今も眠っている、レイがいるはずの場所。──映像で見たものと同じリビングへ。
少し、足取りは重くなった。今から自分たちは、レイの過去を暴いて認めさせるのだろうから。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時