109話 ページ19
「……つまんねぇよ。道具にされんのは……」
ザックはぽつりと呟いた。まるで独り言のように言葉を落とす。
「でもな、今はあの女の思うがままになってやる気はねぇ。ここから出んのが先だ。だから、お前らのいいように使われてやるよ」
ザックは顔を上げて言い放つと、鉄格子の向こうに手を伸ばして、レイが持っていた注射器を強引に奪い取った。
「待って、それ私の注射器……」
レイが焦りを含んだ声で言う。
「うるせぇ。よっぽど危ねぇ薬みてぇだけどよ、でも毒じゃねぇんだろ？ これで俺が死ぬなら、てめぇらなんかすぐ死んじまうってことだ。なら俺がうつ方がよっぽどマシだ」
ザックは不敵に笑った。
「……待って」
「ザック、ダメだよ！」
レイがザックに手を伸ばす。Aもギリギリまで鉄格子に体を寄せて、精一杯手を伸ばしたが、ザックは後ろにさがってしまい、手は届かない。
「待って！」
「待たねぇよ」
Aの叫びに、ザックは見捨てるような声でそう言った。
そして、レイとAを一瞥すると、パーカーの袖部分をめくって、二本の注射器を同時に腕へ突き刺した。
「あ……」
躊躇なく、得体の知れない薬品が、ザックの中に吸い込まれていく。Aは、伸ばした手を下ろすことも出来ず、その様子を見ていることしか出来ない。
ついに、全ての液体がザックの中に吸収されてしまう。
Aはうなだれて、そっと手をおろした。
手が、届かなかった。
カチャリ、と。次の扉が開く音がした。
「鍵、あいたな。さっさと行くぞ」
薬の効果はまだ現れていないらしい。ザックは何もなかったかのように、さっさと扉をくぐっていってしまう。
「うん……」
レイが不安げに返事すると、扉に向かって歩いていく。
Aは、床に投げ捨てられた、中身のなくなった注射器二本を見つめて、身震いした。
今は何ともなくても、きっとすぐに薬の効果が現れる。
(ザック……お願い、死なないで……)
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鬼灯黒狐(プロフ) - 更新私の方が遅いので大丈夫ですよ(;´д｀)w (2018年10月4日 21時) (
レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 鬼灯黒狐さん» ありがとうございます！最近更新速度がおちてしまっていて申し訳ないです(>_<;)これからもがんばりますので見てやってくださいm(*_ _)m (2018年10月2日 7時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯黒狐(プロフ) - ザック最高...更新頑張ってください！ (2018年9月30日 20時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2018年9月8日 19時
