1章 長く幸せな夢を見ていたような〈６話〉 ページ10
「だってそいつ、亡霊じゃん。」
電気が流れてきたかのような頭痛がティーを襲った。
「……亡霊？誰が。こすずが。……な、訳ない。」
消え入りそうな震える声で、自分を納得させようとした。
ずっとそう思っていた。_____と思っていた。本当は、心の奥では分かっていたのだ。只、知りたくなかった。面と向かって誰かに言われたら、今までと変わってしまう。どんなに頑張っても、今までの自分とは違う何かになってしまう。
自分が信じていないことを願いながら、ばっと顔を上げる。
「こすっ……！」
こすずは泣いていた。
亡霊だと､嘘を言われたからか。______違う。本当だったのだ。
こすずの涙は床に着く前に空中で消滅して、床を濡らすことはなかった。
「気付かれちゃったの､ね……。」
強がってふっと微笑むが声は震えている。
唯一のまだティーの前に居る友人。何百年も独りの自分を支えてくれていた大切な人。そう思うと信じたくなくなる。
「…………よね？｣
「ティー？｣
「違うよね！嘘だよね！ずっと、一緒に居られるよね！」
ティーが夢中になって叫ぶ。こうやって叫んでいればこすずは何処にも行かない。昔からそうだった。こすずは何百年も前から､いつまでも子供のようなティーの隣で、駄々を捏ねても説得してくれた。泣いている時も､一緒に居て大丈夫と言ってくれた。
「…………だからいつも通り、隣でいつまでも、励まして…………。」
ティーが無我夢中の訴えは、強がりも限界に達したこすずによって却下された。
「嘘じゃないわ。でも､一緒に居て関係がおかしくなっちゃうよりは、いいじゃない。」
言い終わる頃、こすずは足元から光の粒子に成り、それは舞い上がり始めた。白い光の粒子は直ぐに足首､膝と彼女の身体を消していく。
「なっ何？｣
「知ってる？ティー､成仏っていうのよ。もうここに居る理由無いのね。」
「駄目っ！私が居る！」
「ティーは一人で平気。」
「待って！」
手首までなくなった腕に手を伸ばすが、手は腕をすり抜ける。そうこうしている内に胸の辺りまで粒子になってきた。こすずは微笑む。
「最後はやっぱり笑顔が見たいわ。」
希望を聞き、ティーは涙をこらえて今出来る精一杯の笑顔を見せた。
「嬉しい。今までありがとね、ティー。」
その言葉を最後に、こすずの身体は全て光の粒子に成り空へと消えて行った。
1章 長く幸せな夢を見ていたような〈７話〉→←1章 長く幸せな夢を見ていたような〈５話〉
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弧瑠十 奏(プロフ) - 00さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると頑張れます。これからも是非ともよろしくお願いいたします！ (2022年6月4日 18時) (
レス) id: 886c7552f3 (このIDを非表示/違反報告)
00 - コメント失礼します。とても面白かったです！本当にお話を書くのがお上手ですね。パート2も楽しみにしています!! (2022年6月4日 11時) (レス) @page46 id: 4683564af1 (このIDを非表示/違反報告)
弧瑠十 奏(プロフ) - 更新かなり遅くなりました。申し訳ございません。 (2021年11月30日 6時) (レス) id: 886c7552f3 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつあめ(プロフ) - 検定頑張ってください (2020年10月26日 8時) (レス) id: f82d3976b3 (このIDを非表示/違反報告)
ソウ(プロフ) - 白夜の世界さん» 有り難う御座います！とても嬉しい御言葉です。これからも、頑張ります。 (2020年6月9日 16時) (レス) id: a9c96849d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弧瑠十 奏 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aaaD
作成日時：2020年2月25日 21時
