【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ5)

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酔わせてください _us ページ5

「どうしたんですか？」

飲み屋のカウンター席で1人で飲んでいたら、見るからに悲しい顔をしている女の子が近くにいた。その横顔があまりにも綺麗だったからか、柄にもなく話しかけてしまった。

「…振られました、彼に」

その子は一瞬びっくりしたようにこちらを見たけれど、俺のことを知らない人だと判断したようで話に応じてくれた。…どう考えても悲しそうに話しているし、なんならもう少しで泣きそうな顔をしているのに、俺は少し安心してしまった。

弱っているところを狙いたいとか、そういうことじゃなくて、…そういうことじゃないなら他にどんな理由があるのか、って話だけど、出会ったばかりの彼女にすこしだけ惹かれているのだ。すこしだけ。

「そんないい男だったの？」

そう聞きながら俺と彼女の間、座席ひとつ分を埋めるようにお酒と皿を持って近寄る。

「…いえ、どちらかと言うと、どうしようもないやつでした」

彼女の話を聞いても、初めに言った通り、割とどうしようもないやつだった。定職に就いていないし(この点では俺も微妙)、バイトはしてもすぐにクビになるし、その割に彼女に辛く当たるらしい。

それに、こんなに素敵な女性のことを振ったとなると、最悪だ。なにを聞いても別れたからと言って泣きながら酒を飲みたくなるようなやつじゃない気がするのだが、やっぱりそこは色々あるんだろう。優しいやつなのかもしれないし、顔がめちゃめちゃかっこいいのかも。

「お姉さん、名前は？」
「…Aです」

ここで名前を聞くなんて、ナンパしているように思われるだろうか。まあ、それに近いものをしているのでそう思われたところで、文句は言えないけど。