【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ4)

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伝えたい気持ちがちゃんとある _ky ページ4

「今年は北海道帰らないの？」

パソコンをいじる俺に温かいココアを運びながらそう聞いてくる。去年は俺は北海道に帰省したし彼女も実家で家族と過ごしたらしい。

家族が好きだから、なんとなく大晦日はそういうものだと思ってたけど、今年は帰らなくてもいいかな、って考えていたところだ。お盆に偶然時間があったから帰省したし。

「あー、帰らないつもり」
「…！友達と予定あるの？」

なんでこんなに身を引くような言い方をするんだろう。普段の俺が冷たすぎるか、いやそんなことないと思う。俺は俺なりに好きの気持ちくらい表現して…

「いーや？Aはあんの？」

ないか。自分の言動を思い返してみても、可愛らしく愛を注いでくれる彼女の姿は浮かぶけれど、俺のそういった姿は出てこなかった。

「ないよー」
「じゃあ一緒に過ごすか」

そう返すと、嬉しそうに微笑むA。やわらかい雰囲気の彼女を見たら、少し不安になってきた。パソコンから閉じて目を離す。

「…俺って冷たい？」

らしくない質問だと思った。こういうことを気にしてるのも、直接聞くのも俺らしくない。それでもうじうじしてるままのがよっぽどダメだ。

「うーん、まあ冷たいかな」
「まじか」

面と向かってそう言われると、なんとなく凹む。恋人に冷たい人だと思われてるって、ちょっとやばくないか。

「ああ、でもそれが嫌とかじゃなくて、嬉しいわけでもないけど、別に嫌いだから大人しいわけじゃないことわかるし」

傷つけるような意図がないことは伝わるけれど、さすがにそれじゃ俺の気が済まない。気を使わせてしまってることが申し訳ないし、そんなかたい付き合いをしたいわけじゃない。

甘いココアを一口飲んで気合いを入れる。

「…好きだよ、俺、ちゃんと、」
「なにそれ、ふふ、たまに言ってよそれ」

嬉しいから、と本当に嬉しそうな目で言われてしまい、…ああこういう彼女を好きになったんだな、と自覚させられる。素直なのに優しくてやわらかくて、いやに気が強くなくてまっすぐで。

「いくらでも言うからさ、」
「うん、私も好きだよ、大丈夫」

欲しい言葉をくれる彼女に、やっぱり敵わないんだ。この幸せを手放さないために、たまには好きを伝えないと。

『伝えたい気持ちがちゃんとある』end