【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ11)

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本命チョコを選んでください _ky ページ11

それは、完全に賭けだった。

「チョコくれよ〜〜」

そう当然のようにキヨはわたしの元へ来た。特別だと思っちゃダメだ、きっと彼は色々な女の子に同じように声を掛けてチョコを貰っているんだろうから。気を引き締めるつもりでそう考えたけど、それはそれで結構嫌だな。

「なにそれ、わたしに頼らないといけないくらい飢えてんの？」

口先では可愛らしくないことを言いながらも内心すごく緊張していた。好きの気持ちがバレないように、明日も今まで通り仲良くできるように、重くなりすぎずに、でも意識させる。それが目標。彼にとっては大人数分の1でもわたしにとっては1分の1だから。

「うっせ」

いいからチョコくれ、って顔をしてくる。キヨは甘いものが好きだからチョコが貰えれば好感度なんてなんでもいいんだろう。

「じゃあ…こっちが本命で、こっちが義理」

どっちが欲しい？そう問いながら彼の前に2種類のチョコを差し出す。本命は試作を繰り返した手作りチョコ。友達に渡していたチョコよりも手間も時間もかけた。義理はさっき購買で買ってきたチョコチップメロンパン。

これほどわかりやすい2択はないだろう。

突き付けられた2択に彼は黙った。これは終わりかも。明日から仲良くもできないかもしれない、それは嫌だから、笑顔で冗談だと告げようと顔を上げると、彼は一方のチョコを手にした。

「……あんまり可愛いことすんなって」

こうなってしまったら、明日から今まで通り、なんて無理だ。…だって、君がそっちを選ぶなら明日からは好きを隠さなくてもいいってことでしょう？

『本命チョコを選んでください』end