【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ1)

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無責任で心強い大丈夫 _ky ページ1

「…ね、起きてる？」

夜中と呼んでもいいくらいの時間帯になって、同棲中の彼が私の部屋に押し掛けてきた。仕事仲間と通話したり、ゲームを選んだり、打ち合わせに出掛けたり、夜に忙しいのは彼の方なのに、こっちにを気を使っているみたいな口ぶりに少し違和感を覚えた。

「どうしたの？」

普段なら自分のいる場所から入ってきていいよーと声を掛けるだけだったけれど、どうしても気になって扉を開けに行く。

開いた先には、見るからに弱っているキヨがいた。声色じゃ判断つかなかったのは私が鈍いのか、彼の誤魔化し力がすごいのか。おそらく後者だろう、彼のキャラクター的にもそんな感じがする。

「なになになになに、大丈夫…、じゃないか」

目が合ったかと思うと、急に倒れるようにもたれかかってくる。肩に顎を押し付けられて、一瞬戸惑ったが、とりあえず頭を撫でてやることにした。

高身長の彼だから、こんな折れ曲がった姿勢疲れるだろうに、なかなかやめない。恥ずかしがり屋でプライドの高い彼だから、文句をぶつくさ言うかすぐに離れるだろうと思っていたのに、なかなかやめない。

これ、相当きてるんだろうなあ。

「大丈夫だよ」
「何が」

無責任で不確かだけど、心の底から出た大丈夫への返事が冷たくて焦る。でもこの言葉は決して嘘でもその場しのぎの慰めでもないから。

「…だってキヨだもん」
「確かに、隣にはAもいるしな」

らしくないことを言ってみたら、らしくないこと返しされた。かと思うと、バッと私から離れてこっちを見つめてくる。その顔は先程より幾分かいつものキヨに戻っていて。

「もう今日は寝ちゃおうよ」

そう声を掛けると、おやすみと素直に部屋を出ていった。何を悩んでいたのかもわからないし、解決できたのかもわからないけど、彼が話したくないならそれでいい。

だってキヨだし、その隣には私もいる。

『無責任で心強い大丈夫』end