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しょうもない事を考えながら、Aを見て気付く。その目がテレビに釘付けな事に。
まさかこのアイドルに心奪われでもしたのではないかと、焦ってテレビを消そうとリモコンに手を伸ばしかけるが、ぐるんと首を回したAに驚いて身体が止まる。
『うつくんもけっこんしたら、しあわせになる!?』
「え、どーかなぁ」
ミヤッキーなんていうふざけたアイドルに目を奪われたようではない事が分かって安心した。だがその代わり答えるのが難しい質問が飛ばされた。
我ながら困ったことに、自分が真面目に結婚生活を送れる気がしないのだ。今まで付き合うだけでも女共に辟易する事が大量にあったというのに、生涯を共に過ごし続けるなど到底出来る気がしない。
まぁAを除いた相手であれば、という話だが。
「相手がAちゃんやったら、幸せになるかなあ…なーんて」
へらりと言えば、何を思ったかAはぱっと立ち上がり座っている僕の腹辺りに飛び込んで来た。流石に衝撃がでかくて、喉の奥からくぐもった声が出た。
何がどの琴線に触れたのか全く分からず、ただただびっくりする。ちょうど僕の両脚の間にはまったAは、そこから僕の顔を見上げながら口を開いた。
『じゃーけっこんしよう、うつくんっ』
「え」
なんとも真面目な面持ちでそんなことを言われ、面食らう。
『しあわせって、いいことでしょ?私うつくんとしあわせになりたいの』
僕の背に回していた手を緩めて、小さな両手で僕の右手をとって握りしめる。そのまま自分の面前まで引き寄せていく。
Aの吐息と手から伝わる温かさで、スマホを握っていた手はじわじわと温まる。
『けっこんしよ。大好きだから』
プリンを食べていた時とは違う輝きを目に宿して、真っ直ぐこちらを見据えてくる。真剣そのものの面持ちで、悪い事をした訳ではないのに何故かいたたまれない気持ちになる。
どこまでも真っ直ぐで、一生懸命で
「ムリやで〜。子供は結婚できひんもん」
物事を知らなすぎる。
驚きやら茫然やらが入り混じったAの頬を、空いている左手でむいっと押す。握られていた手が緩み、僕の手がするりと抜ける。
「さーてと、僕後片付けしとるからね」
ソファーから立ち上がってデザートの皿を持ち、洗い場へ向かった。

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睡蓮(プロフ) - こう言う監 禁だけど愛のある、、、愛しかないお話大好きです^ ^ (1月4日 12時) (レス) id: 4406a3fc8c (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず(プロフ) - 時雨さん» 【d!×はぴしゅが】が見たくて自己満で作ったモノなので、そのようなコメントをいただけてとても嬉しいです…! (2023年6月14日 22時) (レス) id: 97349c3877 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - d!様も原作も好きなんで供給過多です)) (2023年6月13日 22時) (レス) id: 361218612a (このIDを非表示/違反報告)
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