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不断の糸《壱》 ページ46

「……足立は、殺しに関係すること以外、ほとんど何もできない。必要ないものがポッカリ抜け落ちたみてぇに、人間性に虚が空いたクソガキだ」


芥川には、それに反論する力はなかった。


空っぽの注射器。血がこびりついた道具。敵を縛ることが出来ても、己の髪を結べないほど不器用な手。


足立が暴力と共に生きる殺人鬼である証拠は、この場所(病院)で眼にした。その事実は決して幻ではない。


着る服を、見せたい印象に合わせて選ぶ技術があるのに 自己の趣味はない。


戦闘と学習以外の趣味趣向が見出せない。


豊かな心をもってる風に見えるのに、趣味や娯楽と呼べるものもなく、まるで『生涯で殺しの腕を磨くだけしかしてこなかった』ように彼の内実はあまりにも殺伐としている。


それは動かしようもない事実だ。


少しずつ、少しずつ、芥川は足立の虚ろを覗き込んだ。親しくなればなるほど、内側が空っぽに仕上がっていることがわかった。


妙な危うさが、足立という人間にあったような気がしていたのだ。


「そうは云いますが」


しかし、目に見えないほど深い深い胸の奥底で、足立一之という人間が壊れ切っていたとしても。


「珈琲もまともに飲めずに泣いている奴が、そこまで深刻に狂っているようには思いませぬ」

「ん?」


芥川には、“これまで見てきたものは 決してまがい物ではない”という妙な自信があった。


「いえ、ですから。あれはココアというお子様用飲料を好むのです。特に、貴方が作るものを。よく話しておりました故、貴方の料理の腕は聞き及んでいる」

「おう…え?」

「知る限りでは、奴が人に話せるレベルの人生最大の汚点は初恋はエリス嬢だったこと、それから−−」

「待て待て待て待て」

「好みのタイプは金髪色白で、料理上手な年下」

「嘘だろおい、待って、待てって」

「まさか僕の情報を疑っていらっしゃるのですか。確かに千代助は、良い人間に見られようと努力してる屑ですが」

「そこまでは言ってねぇよ」

「流石の奴も、好みの女の傾向で嘘をつかねばならぬ理由もございますまい。……いや、逆にとんでもない性癖を隠し持ってる可能性も……」

「待てっつってんだろ!!」


先ほどまで青い顔をしていた人間が、突然けろっとして衝撃的な世間話を始めたのを、中也はようやく止めることができた。

しかし、なぜ自分が芥川を止めたのか理由が思い出せないでいる。いや 心当たりが多すぎてまとまっていない。

不断の糸《弐》→←徒花の散る頃《六》



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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