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優しい世界《八》 ページ35




読み上げられたところから次々に、心肺停止の音が聞こえた。 医者の叫びがした。だれかの泣き叫ぶ声もした。


報告書の数どおり、五人。その数の人数が、同時刻に、千代助の目の前で死んでいく。


その光景を。千代助は目を赤く光らせたまま、虚ろに眺め続けていた。


鎖とは何だ。なぜ、眼が赤い光を宿すのか。——これから死ぬ人間の運命が見える? そんな体質があるのか。いや、まさかそんなはずは。


無いと、言い切れない。


それは、千代助が随所で発揮する、鋭い勘と何も変わらないように見えた。


「……彼らも、きっと苦しまない。モルヒネはそういうお薬なんだ」


纏っていた白衣から、注射針がこぼれ落ちた。


僕は何も言えずに その針を眺め続ける。針の先には、乾いた血液がこびりついていた。


生きたまま四肢を千切られた、裏切り者の体。死相が刻まれ 無表情のまま虚空を見つめる乾いた瞳。


同時に死んでいくマフィアの構成員。それを予言したかのような報告書。


そして、奴の白衣からは使用済みの針が出た。



『大丈夫だよ。鎮痛剤(、、、)は 効いていたんじゃないのかな』


とてつもなく、嫌な予感がする。


「お前。裏切り者が鎮痛剤を打ったなど、どうしてわかった」


それを今知っているのは、医者。あるいは、あの殺された男か。【男を殺した張本人】だけだ。


千代助は赤い瞳を輝かせ、僕のほうを向いた。


それから云った。



.→←優しい世界《七》



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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