スタートレック・ファンタズム《伍》 ページ25
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「貴様らの目的はなんだ」
芥川は病院の窓に座る女に言った。
「宮仕えの狗共が、その男に何の用だと聞いている」
「…………狗?」
「惚けるな」
芥川は一歩も引かず、睨みつける。
「貴様の帰属組織を当ててやろう、そこな女。『内務省 異能特務課』。違うか」
返事の代わりに、機械油の切れたような軋みが鳴った。まるで石臼同士をごりごりと挽いたような、不快な音だ。
音と共に女は、鈴を鳴らしたように可愛らしい少女の声で喋った。
「私が、狗。……そう、私が。政府のイヌ。貴方にはそう見える?」
女がこちらを振り返る。非生命的な赤がギョロリとこちらを向く。濁った色の赤だ。
作り物めいた幼い姿とは裏腹に、妙に古ぼけた“時の埃”を被ったように見える。古城の物置小屋に放置された、骨董品の球体関節人形を思わせた。
「黙れ。こたびの惨状……病院を覆い尽くした薔薇は、は貴様の仕業だろう。女」
芥川は呻るように凄んだ。
「それに今。坂口と云ったな。異能特務課の坂口安吾は、マフィアの反逆者だ。奴と繋がりのある貴様を逃すわけにはいかぬ」
「あら、そう」
「―――首を出せ。殺される前に情報を吐け。内容によっては苦しまずに済む」
女は数秒瞳を瞬かせてから、ややあって小首を傾げながら、
「貴方はだれ」
とだけ 興味もなさそうに言った。関節が曲がるたび、コキン、と金属のすり合わさる音が聞こえてくる。
糸を手繰り寄せたような、キリキリとした回転音だ。
まるで何かのカラクリが動き出し、歯車がカタコトカタコト動き出した様な。
その音がどこから鳴っているのか芥川には判断できない。
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時