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おしからざりし命さえ《参》 ページ13

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紅葉は右手に鞘を置き、抜刀とともに一歩を踏み抜いた。刀身が通ったところを、ちりり、と空気が焼け焦げる。


切り裂かれた空間の先には、―――彼女の部下であるはずの黒服が、ただならぬ形相で刀を交えていた。確か名は。


「稲生、武太夫」

「芥川さん…!」


芥川は名前を呼ばれて顔を上げた。稲生は紅葉との鍔競合いの最中、目を大きく見開き叫んだ。


「芥川さん、早く、離れてください!! こいつは尾崎さんでは——」

「離れろ芥川」


稲生の意識が刀から離れた留守を狙い、紅葉は足払いを短くかけた。


なにかの術にはまったように、男は短い悲鳴を上げて崩れ落ちる。しかし、刀を握る手は緩まない。


確かな戦いの意志。


部下が上司に、それも幹部に、刃を向けている。彼女には忠実に従う、従順な印象しかない男が。


目の前の光景が真かどうかすらわからない状況の中、紅葉だけが冷静さを保ち、笑っていた。


「芥川よ。先ほどの言葉の通りじゃ。私は足立一之を生かしにきた」


紅葉が刀を持つ左腕は、彼女の利腕ではない。しかし手加減があっても、一回り以上ガタイの良い男が手も足も出ない様子だ。
 

正面の切込みを、わずかに身をそらすだけで紅葉は交わす。重心が崩れた。その隙に、稲生は抵抗するまもなく、腹に強烈な蹴りを喰らった。


全てが同時に見えるほど、一瞬の出来事だった。


「グッ……う、」

「喋るでない。騒ぎを大きくしたいか?」

「ングッ!ぐううう!」


正面から倒れた男の背で腕を固め、冷酷に言い放つ。
背後から猿轡(さるぐつわ)をかまされた稲生の叫びは、布に吸われていった。


紅葉の動きは、芥川からは彼女の背が死角になり、何も見えない。


「尾崎幹部。一体何が、」

「……坊主。これが何だかわかるかえ?」


芥川は、紅葉がむき出しにした稲生の首筋を見た瞬間、小さく叫びをあげた。


「これ、は。手形……?」

「見ての通りじゃ」


手形のような痣。それがいくつも、腕、首、稲生の体のいたるところへ散らばっている。


稲生の顔からは血のような涙が流れ、何かから逃れるように暴れ続けていた。


「ドグラ・マグラ。夢野久作の精神操作を喰らったものは皆、こうして正気を失っていく。…呪いを受信したものを見たのは初めてか?」

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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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