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『きっと、お殺せなさいませね。
きっとよ。お願いいたします。
…白蛇の呪いをどうか、解いてくださいな』
『そうしたら、この体もすっかり差し上げます。今でも、直ぐにでも差し上げます』
それから日が昇り、僧侶は「参拝中の身としては、殺生をする訳には参りません。きっと帰りにはきっと立ち寄ります」と残して熊野の山へと向かって行きました。
私は、何月が経とうとも、彼を待ち続けました。
幾月も幾年も経とうとも、私を殺してくださるあの方だけを待ち望んで、耐え忍んで待ちわび続けました。
…それを。
『蛇の祓えなど出来ようものか、気色が悪うて辛抱堪らんよ』
こんな言葉一つで、あの者が逃げ帰っていたなどと聞かされた時には、もう。
憎くて、憎くて。
逃げ惑う男が鐘の中に隠れた時。
かつての父と同じように、私は鐘の外から火を吹いて、蒸し焼きにして、殺してやりました。
私は白蛇などではなく、龍だった。
火を吹き、空を飛ぶ竜に姿を変える魔性だったのです。
容易に人を殺めてしまう鬼を心に飼った、
とんだ、化け物だったのでございます。
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伊織 - もう好き...!最後ウルっときましたよ。というか泣いちゃいましたよ。ほんと構成がお上手で...。芥川先生の作品たくさん使ってるの凄い好きです。千代の方も読んでるのですが作者様天才ですね。感動作品をどうもありがとうございます...! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - コメントありがとうございます!!初めて書いた女主人公が蜘蛛(雌)ェ……とはいえ、実は人間だった頃が誰なのか、モチーフが居ますので、もしも暇だったら蜘蛛の前世当てクイズに挑戦してみてください笑笑 意外にも多くの方に読んでいただけて嬉しい…(芥川はいいぞ…) (2019年4月2日 11時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
多田野メガネ(プロフ) - どうも多田野です。千代の記以外の、それも女(雌?)主人公が新鮮でした(°▽°)突然の告白ですが、所々に芥川作品要素を垂らしていくマボ様が好きです。 (2019年3月27日 13時) (レス) id: d89d5986ef (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - ありがとうございます!!何も考えずに三時間で書いてみるチャレンジで、殊の外うまく書けたものなので完結させてみることにしました笑笑ギャグシリアス、展開などこれっぽっちも考えず、思いつきで書いております。とても短いお話ですが、最後までお付き合いください! (2019年3月25日 16時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴※惰眠愛してる(プロフ) - 新作おめでとうございます! (2019年3月25日 0時) (レス) id: cf0e41908a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2019年3月25日 0時