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「軍警はこのことを何も知らなかった訳がない。知っていて、12年間放置し続けていたのだよ。警察はなぜ、緒方家を放置したのか。

 それは、いずれ自然消滅することを知っていたからだ。ポートマフィアによって虐殺が行われる、ということを。

 触れなければ責任を取らずにすむとき、警察組織は介入しようとしない。たとえ事件に巻き込まれて命をおとしたとしても簡単に見捨てる。『命の選択』をする。君はまず、このことが許せなかったんだろう。警察が君たちを見捨てたことを酷く憎んだ。

 正義の味方が『命の選択』をすること。あるいはその行為自体が、清廉潔白な君の魂にとっては禁忌になった。人を殺しても良い理由を作ってはいけない、と。強く強く考えるようになったんじゃないかね」


―――薫は、強く唇をかんだ。
わななく心を押し殺すように。


「だが、薫君。君は人を斬るのを誰に教わった」

お父さま。お母さま。兄さまに姉さま。おじいさま、おばあさま――――家族みんな。

「なぜ人を斬っても良いと教えられた」


お国のため。正義のため。

少年は目をつぶり、優しい思い出に耳を傾けた。

笑顔の母や祖父。皆は子供を取り囲み、くちぐちに教え伝える。


「目的のためなら人を殺しても良いのだと。99人を救うために、死ぬ運命にある1人がいる。その一人を迷わず斬りおとす、『命の選択』をせよ……と、」

「君はそれが正しいと思ったのかい?」

「―――――」


それは、長い長い、沈黙だった。

12から16まで生き延びた4年間は、おそるべき忍耐の4年間だった。

代わりに鴎外が言った。合理主義者としてではなく、少年の忍耐によりそう大人として。


「中也君と過ごすうちに、君は気が付いた。人殺しが罪であり、忌むべき行為だということに。だが、緒方家が君に教えたことは、『命の選択』だった」

「緒方家を襲った惨殺が、因果応報だとは考えたくない。だから、君は自分を呪ったんだね。自分さえ居なければよかったのだと、そう思っている間は、家族が国に排除される悪人だと考えずに済むから」

「そして、…子供を奪った私ではなく。その選択を許した『特務課』と、家族を見捨てた『軍警』を呪った。これが真相だ」



仕置き人の産声《上》→←Q3「マフィアに捧げる懺悔。および特務課、軍警への憎悪」



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設定タグ:文スト , 芥川龍之介 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:ミステリー
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - 飛沫さん» ご読了ありがとうございます!!!書いて良かったです!!!!いつも応援のメッセージやイラストをありがとうございました(;_;)完結までの糧になりました!これからも創作活動をやっていこうと思える応援の数々をありがとうございました!!! (2020年6月27日 10時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 完結おめでとうございます! テストのせいで読むの遅れてしまいました。足立くんの切実な心を見れて嬉しかったですし、凄く感動しました!おつかれでした!! (2020年6月27日 7時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - よしな。さん» 最後まで読んでくださってありがとうございました!!!!闇堕ちする過程のお話なのでふざけることなくここまできてしまいましたが、シリアスでも最後までお付き合いくださったのがマジでありがたいです!書いてよかった!!!ありがとうございました!!! (2020年6月23日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 好きです……!闇堕ちして暗殺業で生きていく決意をした足立くんを見たときは泣きそうになりましたが、茨の道を進んでも彼はなんとか生きてほしい。やっぱりこのシリーズ凄く好きです。 (2020年6月22日 22時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 操咲作乃さん» こんにちは!元気です!!!コメントありがとうございます!!コントもシリアスも頑張って書いていきますので、おつきあいください笑笑笑笑 (2020年5月12日 15時) (レス) id: b5b4ae2a61 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2020年5月10日 17時

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