菩提樹下の逍遥《四》【文IスIト】

Q１「足立が誓ったのは復讐なのか？」 ページ3

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「おおくの場合、人間が復讐を誓ったときに、標的に求める処遇(しょぐう)は二つしかない。
破滅。あるいは服従だ。Qの地下牢が破壊されたとき、この定義にのっとって、君は私の破滅を望んでいるのではないかと考えた。そこで予想される復讐の目的は２つある。
１、家族を奪ったマフィアをつぶす
２、洋食屋の子供たちや親爺さん、そして織田君を奪う計画に手を貸した『特務課』を攻撃する

…おやおや、そんなに蟲をみるような眼でみつめないでおくれ。私にも人間の情を察しようと頭を悩ますことはある」

「おおくの場合、貴方が情を察しようとするときの目的は２つしかありません。謀計術策(ぼうけいじゅっさく)、あるいはエリス嬢」

鴎外の片眉が上がる。無事に皮肉を受け取ってくれたようだ。
どうせこれからこてんぱん(、、、、、)にされるのだから、これぐらいは許してほしい。

「君の方は概ね正解だね。だが、私の予想はことごとく外れた。実際には足立君の破壊が及んだのはマフィアじゃない。特務課や、何も因果がないはずの軍警が大打撃を喰らっている。この状況を少し、整理してみよう」


カルテにさらさら、と書き込まれた図を見せられる。
内容は次の通りだった。

実際の被害
１、一般人だけではなく、マフィアの構成員が巻き込まれないための工夫がされていた
２、無関係のはずの軍警が大打撃を受けるような作戦だった
３、(空白がつづいている)

―――これ以上俺をおちょくるのはやめろ。


「足立君。君は、論理的な会話が出来る若者だと信じているよ」

威圧がこもった笑みに押され、立ち上がりかけた腰をおちつかせる。
異能で紙を思い切り裏返してから、ふたたび向き直った。

「順番に話していこうか。まず１の根拠について。

　諜報の彼らが乗った飛行機を狙撃するとみせかけて、爆弾を仕掛けておく作戦は悪くなかったよ。自分たちで解除を選べば石油コンビナートが爆発し、国そのものがマフィアの敵になる。その道を選ばず、自害を決意しても、君にとっては仇を討ったも同然の状況になる。

　一見すると、かなり足立君に有利に見えるが、内実はそうでもない。
なにせ、石油コンビナートは本部から車で30分圏内にあるからね。本部から梶井君がとんでいけば、生徒である君の作品を解除するのに３分もかからない。

　それをうぬぼれ屋でもない足立君が、予測できない訳がないのさ。中也君が諜報の彼らを見捨てて、さっさと飛行機を墜落させる可能性にかけたとも思えない」

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