チェックメイト《四》 ページ14
「つまり、精神操作の異能者を殺害すれば、『一生その異能者を脳の中に閉じ込めることができる』。言い換えれば『殺した精神操作能力者の力を使うことができる』。
……何が言いたいのか、もう解ったな」
芥川は、自分が見た幻が「現実の風景」だったのだと、今更ながら理解した。
「
紅葉は静かに頷き、微笑んだ。
「そう言ってやるな。母親を殺すというよりも、正当防衛のために突き刺した、と云うほうが正しかろうよ。
あの母は、幼い我が子の首を絞めながら、呪いのように憎しみの言葉を投げかけておった。
無論、それが母の本心でないことも解った。
——母は、自分が死んだ後も息子を側で守り続けるために、『脳に取り憑く』ことを選んだのじゃ」
そして、尾崎紅葉は、足立を親殺しの罪から庇ったのだ。
「
紛れもない母の愛じゃ。私は女として——あの母の想いを無碍にすることなどできなんだ」
「育ての親を殺した」という罪を紅葉が庇い、「親の仇」と憎まれることを選んだ。
諜報部隊はたしかに足立の家族を虐殺した。しかし、たった一人、この尾崎紅葉だけは、足立一之の味方だったのだ。
「私の心だけに残しておく。それだけで良い。童が真実を受け止めきれると思っているのかえ」
芥川には判る。
それを受け止められるほど、友人の精神は頑丈にできていない。足立にとっては毒薬のような記憶だ。
「しかし、いずれ受け止めねばなりませぬ。貴女への恩は必ず返させます」
「なんと。頼もしいのう」
芥川の力強い言葉に、紅葉は鈴が鳴るように笑った。
「さて、本題はここからじゃ。
芥川はこくり、と頷く。
「勘、ですね。千代助の悪い勘はよく当たる。いや、必ず当たる。他人の死期から極々小さな不運まで、千代助が予兆を見逃したことはありませぬ」
「鴎外殿が欲しがっておるのは、その『勘』じゃ。死期を視る目を持つ異能者は貴重じゃからの」
王侯の椅子にこしかけ、男は笑う《上》→←チェックメイト《参》
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - 飛沫さん» ご読了ありがとうございます!!!書いて良かったです!!!!いつも応援のメッセージやイラストをありがとうございました(;_;)完結までの糧になりました!これからも創作活動をやっていこうと思える応援の数々をありがとうございました!!! (2020年6月27日 10時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 完結おめでとうございます! テストのせいで読むの遅れてしまいました。足立くんの切実な心を見れて嬉しかったですし、凄く感動しました!おつかれでした!! (2020年6月27日 7時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - よしな。さん» 最後まで読んでくださってありがとうございました!!!!闇堕ちする過程のお話なのでふざけることなくここまできてしまいましたが、シリアスでも最後までお付き合いくださったのがマジでありがたいです!書いてよかった!!!ありがとうございました!!! (2020年6月23日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 好きです……!闇堕ちして暗殺業で生きていく決意をした足立くんを見たときは泣きそうになりましたが、茨の道を進んでも彼はなんとか生きてほしい。やっぱりこのシリーズ凄く好きです。 (2020年6月22日 22時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 操咲作乃さん» こんにちは!元気です!!!コメントありがとうございます!!コントもシリアスも頑張って書いていきますので、おつきあいください笑笑笑笑 (2020年5月12日 15時) (レス) id: b5b4ae2a61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2020年5月10日 17時