ディアボロ《下》 ページ38
◆
―――わが道を行く芥川龍之介という男は、共感性に乏しい。
たしかに、身近な存在に向ける愛情は本物だ。表現はかなり下手くそだが思いやりも持ち合わせている。
しかし、それは相手の心情を想像して行われるものではなく、芥川の立場によるものでしかない。本性はただ、ひたすらに、原始的で攻撃的だ。
だから、こんなことを芥川が思ったことは、これまで一度もなかった。
敵に振るう暴力も、力を誇示するためだけの暴力もためらったことはなかった筈なのに。
「戦いたくない」
その異質な
足立を狂わせてきた鳥女の呟きが、ピタリと止んだ。
とたんに世界がクリアに見えはじめる。
正気に戻った足立に、地獄よりも地獄的な現実が襲いかかった。
爆弾のかけら、傷ついた柱。息絶えた軍警。
これまで向けられていた殺意が、『戦意を奪うためのこけおどし』だったこと。
自分で傷つけた【左腕の傷】をみて、ひどく芥川の心が痛んでいること。
これまでの自分の暴走を止めるために支払った、芥川の代償。
「……ごめん、」
二人の間から、ようやく戦争の気配が消えていった。
「こんなにたくさん、酷いことさせて、ごめん、ごめんな」
傷ついていないほうの腕で、芥川の肩を抱いた。
折り紙が色を失い、ぼとり、と土の上に転がる。すべて一点の曇りもなく、色を失っていた。
◆
129人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
伊織 - いえいえ!!私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか!」で流してください( ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……!誤字報告ありがとうございます!多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします!ありがとうございました!! (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ?みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます!!これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「?!」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年7月8日 15時