死の味がする生の幸福《参》 ページ14
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質問に隠して、俺はこう尋ねていた。
『貴方が俺の正体を知った時、中也さんはどうするんですか』
『俺の生まれて育った家族も、貴方はみんな殺してしまいますか?』
それでもお前は生きていても良いと、中也さんなら言ってくれるような気がした。
先代の孫だろうと、お前はお前だ。と笑い飛ばして、昔と変わらず不器用な俺の先生でいてくれるんじゃないかと。
何度も淡い夢をみて、こっそり泣いたりした。
そんな期待をもって生きてきた俺の人生は、無駄ではなかっただろうか――、
そんな期待は、一瞬で砕かれた。
「殺す」
「首領の命令に意味なんざ求めねえ。
組織の為の暴力を躊躇う理由があるか?」
………少しは、悩んでくれたっていいじゃないか、
こういう人間なんだ。
俺の家族も。
子供たちも。
自分の目的のためなら平気で殺していく奴ってのは。
貴方もか。
貴方もか。
貴方も俺の家族を、教え子を、…大事な人たちを奪うのか………!!!!
「さりともと、思ふ心にはかられて。
世にも今日まで、いける命か」
―――それでもきっと、あの人は戻ってくるかもしれないと思い続けて。今日まで生き延びてしまった私の生命。……ああ、これが、私の命というものか。
こんな悲しい詩を詠んだ女の人の気持ちは、今なら少しだけわかるかもしれない。
きっと中也さんは、俺に生きていても良いんだと言ってくれる気がしていた。
そうやって勝手に信じて、理想を押し付け。挙げ句の果てに、本人に殺すと言われちゃ世話ねえや。
この人も。俺に死ねと言うんだな。
「おい、やめろ…!!!」
俺の歌で呼び出した折り紙は、綺麗に刀の形になる。
悲嘆に暮れた女性の詩を纏った折り紙は、まるで本物のように俺の身体を貫いた。
髪分身のニセモノを、深く突き刺す幻の刀。
幻の血。どれも俺がイメージしたものをそのままに映し出し、中也さんの目を欺く。
「クソ……クソ!!! 畜生、畜生!!」
目の前で再び、弟子が自害したものと思い込んでいるらしい。
その背後で俺は、じっと貴方をみているのに。
中也さんは目の前の幻が本物の俺かどうかなんて、少しも疑っちゃいない。
何かを呟いていたが、俺はもう聞く気になれなかった。
首領の命令が降れば、今は悔しがってるこの人だって、俺を殺しにくる。人間なんてそんなもんだ。
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伊織 - いえいえ!!私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか!」で流してください( ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……!誤字報告ありがとうございます!多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします!ありがとうございました!! (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ?みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます!!これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「?!」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年7月8日 15時