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＊ ページ43
その瞬間、何かを床に叩きつけるような音がしたかと思いきや、史とロスティスラーフの間に、様々な紙類や文房具、バインダーや名札が散らばる。出発点は床に落ちたトートバッグだった。
「……ぅ、みません！ うっかり！ 落として、しまいました！」
叩きつける挙動の手のまま、語頭の聴き取りづらい大声で朝陽は言った。俯いていて、表情は伺えない。
その瞬間、ロスティスラーフの身体は呪いが解けたように動き始めた。手伝います、といって散らばった文房具を集める。何か文字が書かれた紙、紙、白紙、鉛筆、衝撃で芯の折れた鉛筆、大きく刃先が開いてしまったハサミ、ハンカチ、ティッシュ。
「……ありがとう」
同じく屈んだ朝陽に、うつむいたままロスティスラーフは言った。
「当然のことです」
同じく小声で朝陽は返した。ようやく拾い終わったところで、「それじゃあ」と彼は足早に踵を返す。
「答えはいつでもいい。話しに来てくれよ」
史の声が彼の背中を追った。はじめて人の言葉に返事をしなかった。
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