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それじゃあ状況を絞り込もう、と史は新たに紙を一枚取り出した。
「現時点で判明していることは以下の通り。差出人である『風森ヒナギク』という人物については協会に記録があった。前身である図書館協会の『U-Geshezt』に所属し、その後離反、そのまま裏図書館協会に所属した人間だ。没年は不祥だけれど、この手紙が書かれたのは彼が39の時だね。資料があまりないため、筆跡鑑定はできなかった。ただ、この文章は一人の人物によって書かれているということは確実だ。字体が統一されている」
それじゃあどうかな、八嶋さん。
そういきなり話を振られた朝陽はびくりと肩を震わせた。
「特にないです」
反射で出たかのような言葉に、史は先ほどと同じ調子で問い返した。
「何でもいいさ。国語の問題と同じ要領で考えてくれてもいい」
「ええと……じゃあ、おそらくこの手紙は大切な方に向けて書かれたんだろう、と思います。そして、会えないけれど、会いたい人へ」
「おれも思った！」
ロスティスラーフの手がぴんと天へ向いて伸びる。発言の許可を求めているのか、と思った朝陽は「どうぞ」と気おされつつ促す。
「はい！ こういう厚手の便箋っておれはあんまりおすすめしないんだよな。割高だし、間違えたときに修正が効きづらいんだ。例えば、鉛筆で下書きしてるときに間違えたら、消しゴムで消しても筆跡がうっすら残るし。かといって、下書きとかガイドの下線とかを引かずに書いたら、だんだん字が上がったり下がったり、大きくなったり小さくなったりしちゃうし。まず間違いなく一発書きはできないと思う」
「じゃあ、入念に準備された上で書かれた手紙というわけだね。周辺資料として、運よく下書き段階のものが出て来ればいいんだが……。他には？」
「封筒見ていい？」
ロスティスラーフの問いかけに、もちろん、と史はビニール袋から慎重に封筒を取り出した。そして、ロスティスラーフに見えるようにした。
「……宛先が分からないんだったら当たり前かもしれないけど、そもそも出されてないよな。この手紙。消印も、宛先不明印もない」
「出さない手紙……いえ」
その言葉を聞いて、朝陽は思い出したように言った。
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