ミス・ファイアの小包 ページ24
夏の終わりの空気は、どことなく謎の重さがある。その重さを見ないようにしようと、人々は浮足立つ。ところどころに灯りがともされたこの通りは、浮足立った人々の喧騒に包まれていた。
「よし！ 間に合った！」
そしてそれはロスティスラーフも例外ではない。ほーっ、と一息つきながら人ごみから出てきた彼の右手には串にささったトウモロコシ、左手にはケチャップのかかったフランクフルト、左手脇の紙袋に入っているのはたい焼きだ。
今晩、この町で花火大会があると知ったのは今日の届け先での雑談の最中だった。花火大会！ 人の集まる場所が好きな彼にとって、参加しない手はなかった。こうやって、知らない町の知らないお祭りに参加できるのも、この仕事のいいところだなあ、としみじみ思う。実は、左脇の紙袋には、「いい食いっぷりだねえ！」とサービスしてもらった分が多めに入っていたりする。彼は、人と仲良くなるのが得意な性質だった。
どことなく煙たいのは、これに乗じて近所で手持ち花火でもやっているのだろうか。まだ花火は上がっていない。が、舞台となる川の近くには既に多くの人が押し寄せていた。もう間もなく始まるのだろう。あんまり前のほうにいても邪魔になるしなあ、と頭を掻きつつロスティスラーフはあたりを歩いた。ふんふんふん、と鼻歌交じりに歩いている途中でトウモロコシとフランクフルトはあっという間に胃の中へ収まった。たい焼き、と紙袋に手を伸ばしたところで、火薬の匂いが強まった気がして彼はふと立ち止まった。あの戦いから、既にかなり時間が経った。火薬の匂いと言えば、いまとなっては花火以外の何でもありえない。けれど、未だに――脳裏に浮かぶのは、銃弾としての匂いなのだ。そのせいで、一瞬体が硬直する。
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