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店主の御厨雪は冷蔵庫を覗き込みつつ、うーん、と首をひねった。ひんやりとした明るさに照らされつつ彼女と相対するのは、三分の一ほど残ったチーズケーキだ。今日で二日目。自分で食べる分には余裕だが、客に提供するものと考えればそろそろ潮時に思われる。
けれど今日はこの天気だし、昨日は一番人気のタルトを多めに焼いていた。それを考えるとチーズケーキは、果たして今日中に全てはけるか、どうか。
湯が沸いた。雪は、一旦考えるのはやめにして冷蔵庫を閉める。
「淹れるよ。セツも飲むのか？」
「お。自らサボりを推奨してくるとは分かってきましたね、トーマンサンも」
「馴れだよ、分かってきたんじゃなくって」
苦笑いをしながら、トーマンはコーヒーポットへ湯を注いだ。手伝いに、と店へ来たはずだった。だから、店を開けるつもりがなかったと聞いて、尻を叩くようになってしまった、と少し申し訳なくも感じる。が、これくらい、彼女が相手なら別にそう感じる必要もないか、とも。
「……質問なんすけど、いまからケーキ食えます？ 四分の一くらい」
「いま何て言った？」
淹れ終わったコーヒーにホイップクリームを乗せる作業の最中、絞りを取り落としそうになりながらトーマンは返した。クリームの形が少しだけ不格好になる。
「チーズケーキ。四分の一くらい食べられたりしません？」
「……商品じゃないのか、それ」
もう一度聞き返すトーマンに、雪はエプロンの皺を伸ばしながら返す。
「そうすけど。そろそろ下げなきゃな、と思って。でももったいないじゃないすか、捨てちゃうの。だから、食べられないかなーって」
「そうか。でも何で四分の一？ 分ければ八分の一だろう」
「いや、私さっきブランチ終わったばっかなんで」
しれっと返す雪を、トーマンは瞬き三回分見つめる。が、雪が方針を変えるつもりがなさそうなのを見て、諦めたようにコーヒーカップへ向き直った。
「お客様に伺ってみようか、せっかくだし」
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