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たしかあの日も水曜日だった気がする。
よく晴れていて、日差しもあたたかかった春の日だった。
『……40.2度…』
体温計で熱をはかると、小さな画面に表示されたのはとんでもない数字。
こんな高熱を出したのはもう何年振りなのだろうと思いながら、病院へ行くために支度を始めた。
__今日は久しぶりにお兄ちゃんが帰ってくる日だったのに。
ぼうっとする頭で、自分の兄の姿を思い浮かべる。
数年前、突然、俺はFBIに入る!と言い出してから、猛勉強をしてそれを実現させた兄。
そのため彼はアメリカへ行ってしまい、日本にいる私とは、年に数回会えるか会えないかというくらいにしか顔を合わせる機会がなかった。
だから今日はすごく楽しみにしていたのに。
滅多にひかない風邪をひいてしまうなんて。
とりあえず、お兄ちゃんが帰ってくるまでに病院に行って、薬をもらって、少しでも体調が良くなるようにしないと。
そう考えた私は、タクシーを呼んで病院へと足を運んだのだ。
.
「お大事にー」
『ありがとうございました』
診察を受けて、薬をもらって、やっと家に帰れると外へ出ると顔が思いっきり引きつった。
待って。今日雨降るとか聞いてない。
ザーザーと土砂降りの雨。
なんの嫌がらせなの。
帰りの分のタクシー代がないからバスで帰ることになって落胆してたところなのに。
これじゃあ、バス停まで行くのに一苦労じゃない。
風邪が余計にひどくなるわよ。
仕方ない。
ちょっと遠回りになるけど、あの細い路地を使ってバス停まで行くか…。
びしょ濡れになるよりはマシよね。
薬を飲んで少し楽になったものの、まだふらふらとする体に鞭をうって、細くて暗い屋根のある道を進む。
こんなことになるなら、病院へ行かずに近くのドラッグストアで風邪薬を買えばよかった。
もうそろそろお兄ちゃんが帰ってくる時間になるし、濡れたら余計に風邪をこじらせそうだし。
はぁ。と小さくため息をつきそうになった時、前方から微かに人の声が聞こえた。
…珍しいわね。
こんなところで人の声が聞こえるなんて。
いつもなら誰もいないのに。
そんなことを考えながら、角を曲がったその時だった。
「麻薬の受け渡しがお前の最後の仕事だったんだ。じゃあな、FBI捜査官、天宮晃大」
「っ…!?」
パァンッ
目の前で兄が撃たれたのは。
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花松ロン(プロフ) - 初めまして。一気読みさせていただきました!!超面白くて、もう2人の関係にニヤニヤが止まりません笑 更新楽しみに待ってます!! (2023年2月23日 23時) (レス) @page37 id: 3241c90ca3 (このIDを非表示/違反報告)
霜月千(プロフ) - 現在一気読みしているんですがめっちゃんこ面白いです‼︎更新楽しみにずっと待ってます (2022年5月15日 12時) (レス) id: daaa59ce20 (このIDを非表示/違反報告)
いちごきゃらめる(プロフ) - めちゃ面白かったです!更新楽しみにしてます (2021年2月24日 17時) (レス) id: 654b6b5b60 (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん(プロフ) - めっちゃくちゃ面白いです!続きが気になるとこで終わっている....続きがめっちゃ気になります!いつか更新して頂けることを願っています!ぜひよろしくお願いします!これからも応援してます!!!!!!!!! (2020年9月13日 16時) (レス) id: 03b3e3161b (このIDを非表示/違反報告)
はりねずみ。(プロフ) - まなさん» ありがとうございます!番外編の後に本編も必ず更新する予定なので、気長に待って頂けると嬉しいです。 (2020年6月24日 0時) (レス) id: f57cf1299c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はりねずみ。 | 作成日時:2019年3月22日 12時