夕日 ページ2
夕日に赤く染まった廊下を、
少し足を早めながら歩く。
・・・白布くんのこと、大分待たせちゃったな。
珍しく部活のない白布くんと一緒に帰る約束をしたはいいものの、
文化祭のことについて円山先生から話を聞いている内に、すっかり遅くなってしまった。
もうすぐ落ちそうな夕日は、最後までその赤も光も絶やさない。
まるで、最後の悪足掻きのようだ。
それに目を細めていると、
もうすぐそこに迫った1組の教室から、微かな話し声が聞こえた。
・・・白布くんが、いるのかな。
開けっ放しの扉の前に立ち、そっと中を覗いて見る。
白布くんと・・・奈々ちゃん？
なんとなく2人の様子を伺ってみると、
2人の話す内容が聞こえた。
奈「・・なんで？」
白「いや、あいつを待ってるからさ。」
あいつ・・・、って私かな。
そう考えてから、ふと見た奈々ちゃんの表情に、
思わず目を見開いた。
それは、
悲しそうな、苦しそうな、
今にも何かが崩れてしまいそうな表情だった。
・・・どうして・・？
カバンに教科書をしまっている白布くんは、奈々ちゃんの表情に気付いていないようだった。
奈々ちゃんが少し表情を緩めて、俯く。
奈「一緒に・・帰るんだ。」
白「ああ、うん。」
奈「・・・・・」
白「・・・それにしてもあいつ遅い。もう迎えに行くわ。」
奈「え、」
え、え・・・
白布くんが自分のカバンと私の机の上にある私のカバンを持ち、扉へ歩き出した。
ど、どうしよう、・・盗み聞き？してたのがバレちゃう・・・
白布くんがこちらに来る前に逃げようと周囲を見回していると、
奈「・・・・ま、まって！」
そう、教室から声が聞こえた。
驚いて教室に視線を戻す。
すると、
奈々ちゃんがやけに頬を赤く染めながら、立ち上がっていた。
白「・・・な、何？」
白布くんが驚いたような声でそう言ってから、奈々ちゃんを見つめる。
奈々ちゃんが少し俯き、沈黙が流れる。
少しして、ぎゅ、と手を握った奈々ちゃんが、顔を上げた。
その真っ赤な顔に、
なぜか、
心が大きくざわめいた。
奈「・・・好きです！」
・・・・・、
・・・・・・・・え？
放課後の、教室に響いたその言葉は、
私の思考を一瞬停止させた。
強い衝撃を与えたなごりみたいに、なんとも形容しがたい感情が、頭にこびりついていく。
奈々、ちゃん？
白「・・・・・・え？」
続く
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作者名：おしお | 作成日時：2019年8月16日 1時
