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 九井さんの後ろをついて行きながら歩き続けていると、着信音が響く。音は九井さんの仕事用のガラケーからだった。もしかして、急用とかかな。帰ることになるかも、と今のうちに食事の期待はやめておく。
 電話に出るなり、顔を顰めて周りを見て私に視線を向けて、口パクで“ここで待ってろ”と言った。


「はい、待ってます」


 きっと、人が多いここでは話すことを憚られる内容だったんだ。九井さんが離れていったあと、近くのベンチに座って待つことにした。しばらくすると、隣の女の人が立ち上がってどこかへ走って行った。チラと隣を見ると、スマートフォンが置いてあって暫く見つめる。


(渡しにいったほうがいい、よね…でももうどこに行ったか分からないし、もし九井さんがその間に戻ってきたら…)


 結果、スマートフォンを持って落し物として総合案内所に届けることにした。そこに行くと、ちょうど置き忘れて行った女の人がいて、私が持つスマートフォンを見るなり、少し大きな声を出しながら指を差した。


「隣座ってた人です…よね…?ありがとうございます…!!」
「あ、はい…どういたしまして、」
「ヒナ、お店予約してるから急がないと」
「あぁうぅ…でも何かお礼したいよ…」


 多分カップルなんだろうな、お揃いのネックレスを付けていた。何とも私が去りずらい状況。無言で居なくなるのもちょっとまずい気がする。でもさっきから、ポケットのスマートフォンからバイブ音が何回も聞こえている。多分九井さんからで、戻ったら怒られるな、て悟る。


「お礼なんて大丈夫ですよ、私も人を待たせているので…」
「あ!!!!」


 女の人があんまり大きい声だったから、ビクッと肩が震えた。振り返ると財布開けていて、お金ではない何かの紙とミルクキャラメルを私の手の上に乗せた。


「それアイス無料券とミルクキャラメルです!!それじゃ、本当にありがとうございました!」
「え、あ」


 怒涛の如く、女の人はぱっぱと話してと隣の恋人の手を握って行ってしまった。私とは正反対の元気な女性だ、と感じていると、またスマートフォンのバイブ音が聞こえて、九井さんのことを思い出してすぐに電話に出た。


《無事か!?》


 第一声がそれで、ちょっとたじろいだ。説教の言葉ではなく、ただ私の身を案じてくれた。



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m(プロフ) - 初コメント失礼します。本当に素晴らしいお話でした。完結前に出会えなかったことは悔しいですが、本当に大好きな作品になりました。人間的なストーリーで心が引き込まれ、感動しました。この作品を作っていただき、残していただき、本当にありがとうございます。 (2023年2月19日 12時) (レス) @page33 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊い - 思わず涙がこぼれてしまいました、、、。切ないしもうなんかよかったです。私もテストヤバイ、、、、、 (2021年11月30日 1時) (レス) @page33 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - セツナさん» 読んでくださる方々のおかげで無事完結出来ました🥰感動していただけたんですか…めちゃくちゃ嬉しいです🥺❣️こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました❕ (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 楸さん» あええ大好きなんて悶えます…🤦‍♀️私もちょっと寂しいなって思ったりしているのでまたココくんの作品書きたいと思ってます❣️頑張ります!!最後まで読んでくれてありがとうございました🤍 (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - アオさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございました!!バンドエンドもいかがだったでしょうか…😌喜んでいただけていたら嬉しいです! (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月12日 0時

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