リナリアの意味【黒】 (ページ35)

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Ep.8-3 ページ35

Side.you

カーテンの差し込む光と、近くで行っている工事の音で目が覚める。
見慣れない天井と香りに体を起こす。

『あー・・目黒くんのお家だ・・』

隣にはスヤスヤと寝ている綺麗な顔の彼。
驚く事に昨日のこと全て綺麗に全部覚えている。

酔った勢いで目黒くんにキスしたこと、焦らしたこと。
あの時の少し苦しそうな顔があまりにも色っぽくて顔が熱くなってきてしまう。
冷静になり、どう接したら良いんだと焦りが出てくる。

「お、はよ」

彼も目が覚めたので、下から声が聞こえる。

『おはよう、ございます・・』

ふはっと笑って何で敬語なの？と聞く目黒くん。
直視できず、遮光カーテンを見ながらタジタジしてしまう。

「昨日のこと、覚えてる？」

目黒くんは私の腰に手を回し抱きつく形で聞いてくる。
それはもう全部覚えているけれど、恥ずかしくてとても正直に言えない。

『少しだけなら、』

「俺は覚えてるよ、Aちゃん俺の名前呼んでくれた」

目黒くんの低い声が腰伝いに響いてくすぐったい。
身を捩ると、ん？どしたの？と聞いてくる。

『腰で話すのやめて、くすぐったいから』

「Aちゃんが可愛いからやめない。あと、Aちゃん昨日のこと覚えてるでしょ」

目黒くんの方を見ると、余裕がある顔というかいたずらっ子みたいな顔をしていて、
熱かった顔がさらに熱くなる。

「ここで言うことじゃないと思うけど、Aちゃんが好き。俺の彼女になってほしい。」

ゆっくりと身体を起こし、私の目をまっすぐに見て言う目黒くん。

『昨日あんなことしちゃったけど、私で良いの？もっと綺麗で素敵な人いるかもしれないよ・・』

「Aちゃんじゃなきゃ俺は嫌だ。この先、忙しくて会えないかもしれないし、寂しい思いさせちゃうこと多いかもしれないけど、俺の大切な人でいてほしい」

『目黒くん、ありがとう。こんな私でよければ、彼女にしてください。大丈夫だよ、目黒くんは夢を追ってね。応援する！』

私が返事をすると、っしゃ！と声をあげた目黒くん。

『じゃ、起きようか』

彼を跨いでベッドから出ようとした所を、
止められ腕を引かれ体制的に昨日と同じシチュエーションになる。
恥ずかしくなり身体を起こそうとするも虚しく、唇を塞がれる。

顔を離され、耳元で彼の低く甘い声が響く。

「名前、呼んで」

ズルい、こんなのズルい。

『蓮、くん』

名前を呼ぶと彼は強くわたしを抱きしめた。