PARACAGE 9th【ars】 (ページ32)

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潤くんがそのパスタを持ってキッチンを出て行ったから私も一緒に出て行くと、リビングでは雅紀くんがモデルを辞める事を決めた経緯について話してる最中だった。
私が聞いた理由と同じ。
もう、咲で居る必要が無くなったから。自分からやりたいと思った仕事はプレスだったから。
皆、頷きながら聞いてる。

「お話中ごめんだけど、ご飯出来上がった」

潤くんが声を掛けると、雅紀くんが「もう話し終わったから大丈夫！」って頭の上で両手を使って大きな丸を作った。

「ドンペリ開けようぜー！」

ニノくんが跳ねるように立ち上がって、ダイニングの方へ移動して来る。
「ニゴも行こうねぇ」って智くんに抱っこされたニゴの頭を翔さんが撫でながら、一緒にこっちに来る。

いつも通り、適当に座る。
潤くんの送別会だからお誕生日席作ろ！って雅紀くんが提案したけど、アッサリ「いやだ」って却下されてた。
本当にいつも通り。
潤くんの作った美味しい料理を食べて、ドンペリをギャーギャー言いながら開けて、飛んでったコルクをニゴが追い掛けたら「お酒舐めちゃダメー！」って智くんが慌ててそのニゴを追いかけた。

沖縄ではどんな仕事をする予定なのか、どの辺りに住むのか、いつ頃から始動するのか...そんな話をみんなで潤くんから聞いた。
翔さんが「今年の夏は沖縄行こっかなー！」って言うと、ニノくんが「お兄さん、盆に遊べるんっすか？」って意地悪な顔して笑う。

「この美味しいご飯も今日までか...」

唐揚げを頬張りながら雅紀くんが寂しそうに呟いた。

「唐揚げなんて、Aに作らせたら良いじゃん」

なぁ？って潤くんが私を見てニヤっと笑う。
私、揚げ物苦手！！
しかもこれ、何で下味付けてるの！？絶対味覚とか無いから全然分からない！

「あ、そうだ。これも言っとかなきゃ」

私が唐揚げをチビチビ齧りながら、味の研究をしてると雅紀くんが話し始めた。

「俺とAちゃんも、近々ここ出る事になると思う...ってゆーか、出る」

唐揚げを口に入れたまま、固まってしまう。
もちろん、いつかは絶対に言わなきゃいけない事なんだけど勝手にまだ先の話だーなんて思ってたから。

でも考えてみれば、もう春が来る。
彼のモデルのお仕事は、もう残り少ないはずだ。

食べかけてた唐揚げを小皿に置いて、私もちょっとだけ背筋を伸ばして座り直した。

潤くんが、下を向きフッと笑ったのが目の端に映った。