PARACAGE 9th【ars】 (ページ18)

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298.チケット。ページ18

翌月から、潤くんは有給消化でお休み。
家に居る事も勿論あるけど、起業する彼らとの準備でも忙しそうで働いてた時とそんなに変わらない感じもする。

雅紀くんは相変わらずモデル業に勤しんでいて、アキラさんのショーにも出演する事になった。

そのショーが、今日開催される。
日本での初お披露目って事で、ワイドショーの取材なんかもあるらしい。
写真かショーでしか見れないモデルって言われてた咲くんが、テレビに映るんだな...とボンヤリ思った。

「え...？A、何してんの？」

休みの私がダイニングでお茶を飲んでると、背中から声を掛けられた。

「あ、潤くん今日は打ち合わせ無いの？」
「いや、俺はお前に何してんのか訊いてるんだけど」
「何って...お茶飲んでるんだけど」

はぁ？って潤くんが怖い顔する。美人の怒り顔は本気で怖いからやめて欲しい。
怒られるような事してないし、お茶飲んでただけだし。

「今日って雅紀のショーだよな？」
「うん...」
「お前、チケット持ってるよな？」
「...うん」

確かに雅紀くんは私に今日のチケットをくれた。
だからお休みも取ってた。

だけど...

「職場に行くのって...どうなんだろうとか思って...」
「雅紀がAにチケット渡したって事は、来て欲しいって事だろ」
「...でも」
「アキラさんが居る所に行きたくない？」
「......」

もう何でも無いって言われても、やっぱり元カノは気持ちの良い存在じゃ無い。
しかも雅紀くんは、彼女をずーっと忘れられなかったんだ。

その人と雅紀くんが一緒に居るのを、私は冷静に見れるのか自分でも分からない。

「行った方が良い」
「......」
「行かなきゃ、後悔する」
「え...？」
「絶対、後悔する」
「えっ！？」

潤くんに手首を掴まれて二階まで引っ張られる。
そして私の部屋の前で「時間が無い。10分で準備して来い」ってドアを開けてその中に押し込まれた。

「...10分って」

ファッションショーに行くのにたった10分で準備って...
とりあえず、出来る限りの猛スピードでメイクをして着替える。

クローゼットの中の黒いワンピース。雅紀くんがロンドンのお土産でくれた物。

部屋を出ると、潤くんがそこで待ってた。

「良い服」
「......」
「それ、雅紀が選んだ？」

私が頷くと、彼は「さすがだな、似合ってる」と笑って一階へ下りて行った。

腕時計を見ると、開演時間が迫ってる。

「ヤバイ...」

遅刻を覚悟して、私は家を出た。