PARACAGE 9th【ars】 (ページ2)

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282.普通。ページ2

智くんとスーパーへ行って、買い出しをした。
和食って何が良いだろう？って智くんと相談して、サバの味噌煮と肉じゃがとお味噌汁を作る事にする。
買い物袋は2個とも智くんが持ってくれた。

家に帰ってすぐ料理を始める。
智くんは、部屋に戻ってお仕事。
静かな家の中に、包丁がまな板を叩く音やお鍋が沸く音が響く。

「いい匂い」
「わっ！？ビックリしたー」

突然キッチンに顔を出したのは翔さん。
顎を少し上げて、クンクンと鼻を鳴らしてる。

「味噌煮！」
「正解です！」
「イェーイ」

両手でハイタッチ。

「翔さん、早いですね」
「雅紀が帰って来ますからね」

翔さんが冷蔵庫を開け「16時前には空港に到着してるはずです」って言いながら、お茶を取り出した。

16時前に...。
傍らに置いてたスマホで時間を確認しようと思ったら、LINEが届いている。

『ただいま！時差ボケで眠たいけど、一旦事務所に寄ってから帰るね！』

「雅紀くんだ...」
「ん？なんて？」

お茶を飲んでた翔さんが、私のスマホを横から覗く。

「事務所に寄ってから帰って来るそうです」
「なるほど」

何って返事しよう...
普通が一番だよね、雅紀くんがこんなに普通なんだから。
ってゆーか、普通で良かった...
敬語とかになってたらどうしようかと思った...

『おかえりなさい！お疲れ様！』
『了解です、気を付けて帰って来てね』

2回に分かれちゃったのは、横からずっと覗いてる翔さんに「見ないでくださいよー！」って言った瞬間に1回送信しちゃったから。

「雅紀、何も変わってない感じですね」
「とりあえず...LINEは普通でしたね」

すぐに雅紀くんから『早く帰りたいー！』って返事が来て、思わず口元が緩む。
たくさん不安だったくせに、本当にゲンキンだ。

「フフッ、何の心配もいらなかったんじゃないですか？」
「だったら良いんですけどね」
「雅紀が帰って来たら、Aさんはちゃーんと自分の気持ちを伝えるんですよ？」
「えっ...」
「もう何があっても後悔しないように、今出来る事はしておきましょうね」

翔さんがお茶を飲み干したコップを受け取り、シンクで洗う。
泡がモコモコと膨らむ事すら、楽しいと思ってしまう程に気持ちが軽くなって来た。

「Aさんは分かりやすい」
「えっ！？......顔に出てますか...気を付けます」
「いえ。女の子はこれくらい素直な方が可愛いんです」

微笑んだ翔さんがキッチンから出て行く。