PARACAGE 9th【ars】 (ページ1)

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281.探り。ページ1

あれ以来、潤くんが何か変わったかと言うと特に何も変わらなかった。

当然だけどベタベタなんかして来ないし、かと言って冷たい訳でも無い。
今までと同じように、同じ距離感で、時々毒を吐くし時々優しい。

だから、やっぱり私の見た恐ろしく自分勝手な夢かなー？なんて割と本気で思ったりもしたけど、階段を上がった所で出会い頭潤くんとぶつかった時

「おっと、すまん」
「あ...ううん、大丈夫」

私が後ろにこけないようにと背中を支えてくれた手の感触は、あの日抱き締められた時と同じで。
信じられないけど夢じゃないんだな...と、何とも言えない気分になった。

・

その日も、私はたまたま仕事が休みで朝からソワソワとした時間を過ごしていた。

「相葉ちゃん、やっと帰って来るねー」

リビングに一緒に居た智くんがニゴを撫でながら言う。
頷くと「嬉しくないの？」って心配そうな顔をされた。

「...ううん、そーじゃないんだけど...」
「緊張してる？」
「そうなのかなぁ...」

智くんは、ただフフッと笑ってニゴを撫で続ける。

緊張...なのかな。
なんかそれも、違う気がする。
だからって、嬉しくないの？と言われると、絶対に違う。嬉しい。やっと会える。

だけど、怖さもある。
もしかすると、そっちの方が大きいのかもしれない。
アキラさんとお仕事をした...というよりも、再会してしまった雅紀くんの気持ちに変化が起きてたらどうしよう...。
曖昧だった私達の関係なら、終わらせる事だってきっと簡単だ。

ハァ...と零れてしまった溜息を誤魔化すように咳払いしたら、智くんがニゴを抱っこして私の隣に移動して来た。

「大丈夫だよ...とは無責任だから言えないけど、大丈夫だって信じようね」
「え...あの、智くん...」

智くんはアキラさんと雅紀くんがロンドンで会ってる事、知らないはずなのに...
彼は少し申し訳無さそうに「あのね...」と話し始めた。

「Aちゃん、ずっと落ち込んでるから気になっちゃって」
「.....」
「ニノに訊いたら、雑誌渡されたの。あのニノがよく読んでるアパレルのやつ」
「あー...うん」
「ごめんね、勝手に探り入れちゃって」
「...ううん」

「相葉ちゃんを信じよ、ね？」と、智くんが頭をポンポンと撫でてくれる。
やっぱり不思議と落ち着く。

「よし！相葉ちゃんに和食を用意しといてあげよ！買い出し行こ！」
「うん！」

私は智くんに手を引っ張られ、ソファから立ち上がった。