PARACAGE 8th【ars】 (ページ5)

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250.ハチ公なのに。ページ5

智くんは両手でマグを包んでズズーっとコーヒーを啜ったと思うと「さて、おれはお仕事に戻る」とリビングから出て行こうとして

「あ、Aちゃん。今日、おれきっと徹夜なの」

振り返り、私に向かって言った。

「だから、いつでも部屋に来て良いからね？」

ニノくんが「またセクハラー」って言うと、智くんは「もう。ちがうよ」って笑う。

「何か話したいなーとか、ただ一人で居るのやだなーとか。そう思ったらおれんトコ来ていいよ、ってこと」
「ねぇ、それオレも行って良いの？」
「良いよ、ニノもいつでもおいで？ってゆーか、相葉ちゃんから逃げてた時なんて毎晩...」
「あぁっ！！思い出させんなっ！！」

二人のやり取りを見て潤くんがケラケラ笑った。

智くんが「じゃ、とりあえずおやすみ」とリビングを出て行く。
私達も何となく、そろそろ寝ますか？的な空気になる。

「Aは、今日も待つの？」
「.....」

ニノくんに訊かれて、ほんの少しだけ迷った。
毎晩、私は忠犬ハチ公なのに。
ほんの少しだけ、どうしようかな...って思ってしまった。

その時、玄関から音がして

すぐに「ただいまー」って、雅紀くんがリビングに入って来た。

「疲れた疲れた...」

ふぅ...と息を吐きながら、キャップを脱ぐ。

「おかえり、雅紀」
「ただいま、潤ちゃん」
「.....」
「ん？なぁに？」
「いや、おやすみ」
「うん、おやすみ！」

潤くんが、雅紀くんの肩にポンと手を乗せて部屋を出て行った。

「オレも寝よっかなー」

私に凭れるように座ってたニノくんが立ち上がる時に、私の頭を軽く撫でた。

「グンナイ」

ヒラヒラと手を振って、彼もリビングを出て行く。

ニノくんと入れ替わるように、雅紀くんが私の隣に座った。
瞬間、大きなあくび。

「お疲れ様、雅紀くん」
「ありがと、Aちゃん」

トロンとした目。
仕事終わりのこの目、何度見ても胸がキュンとしてしまう。

「ねぇ、雅紀くん...」
「ん？」
「前に言ってた、海外ロケの事なんだけど...」
「うん」
「あれって、いつから行くの？」

雅紀くんが「えっとー...」って視線を上に向けて、きっと自分のスケジュールを思い出してる。

「来週、だったはず」

「うん、そうそう来週だ」って自分に確認してるように頷く。

「もうすぐだね、準備できてる？」
「ぜーんぜん！何持ってけば良いのかなー、お米とか？」

雅紀くんが、アハッと軽く笑った。