PARACAGE 8th【ars】 (ページ34)

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279.DOOR。←12.14 ページ34

彼の左手が後頭部に触れる。

「なぁ」
「......」
「ここが男の部屋だって事、忘れてない？」
「...え...」
「しかも、その男はお前が好きだって言ってるんだけど」

頭の上にあった潤くんの顔が、俯く私の顔を下から覗き込んだ。

「そんな隙だらけで良いの？」

彼の右手が頬に触れる。

下睫毛まで綺麗に揃った潤くんの目が、射抜くように私を見上げた。
頬に触れてた親指が、私の唇をなぞる。

「すっげぇキスしたいんだけど」

ほとんど口を開かずに、呟かれた言葉。
潤くんの胸をもう一度押したけど、やっぱり離れさせて貰えない。

「潤くん、あの...」
「フフッ、大丈夫だって。俺の理性って、必要以上にやたらと仕事してくれんの。残念ながら」
「...え...？」
「だから、したいけどしない」

そう言うと、潤くんは私の身体を腕の中から解放して顔の横に両手を挙げ、お手上げする。

「だけど、さすがにこれ以上は我慢の限界だから」
「......」
「自分の部屋、帰って良いよ。ってゆーか、帰って」
「......」
「あと10秒で出て行ってくんなきゃ、襲うぞ」

口を尖らせて、私を睨む。
私がベッドから立ち上がると、潤くんも立ち上がって後ろから私の両肩を掴んでグイグイとドアの方へと押した。
「さぁさぁ、帰った帰ったー」なんて言ってる潤くんに押されるがまま、あっとゆー間にドアの前。

「...A、勝手でごめんな」
「え...」
「あー、振り向かなくて良いから」

肩を押さえてた両手が上に移動してきて、振り返ろうとした私の頭をガッチリとホールドする。

「話、聞いてくれてありがと」
「.....」
「お前を超絶面倒臭い状況にして、申し訳ない」
「.....」
「おやすみ」

後ろから潤くんの手が伸びてきて、私の目の前のドアを開けた。
そして、トンっと背中を軽く押されて私は廊下へと出される。

直後、背後でドアが閉められて

放心状態で振り返りそのドアを少しの間見ていると、部屋の中から音がした。

それは何かがズルズルとドアに擦れ、ドンっと床に落ちたような

そんな音だった。

・

翌日は遅番だった私が潤くんと顔を合わせる事は無くて、少しホッとした。

あの後はよく眠れなくて、多分1時間も寝てないのかもしれない。
雅紀くんと潤くんの事を、交互に考えていた気がする。

「Aちゃん、眉間に皺ー」

ダイニングで朝ご飯を食べてたら、対面に座ってた智くんが私の眉間を人差し指で撫でた。