PARACAGE 8th【ars】 (ページ31)

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276.チョモランマ。ページ31

「アイツ、寝てるの起こされんの異常に怒るからな」

潤くんがベッドにポスンと腰掛けた。
掛け布団が少し捲れてる。

「もう少しだけ、話せる？」
「......」
「ってゆーか、ここまで話したならもう全部白状しておかなきゃ気持ち悪い」
「......」
「だから、...俺の為に聞いてよ」

彼がそう言って、少し頭を下げた。
私が黙って潤くんの隣に腰掛けると、彼は「サンキュ」と小さく笑った。

「勘違いしないで欲しいんだけど」

潤くんから出て来た言葉がちょっと想像とは違って、思わず「へ？」と返してしまう。

「さっきも言ったけど、俺は好きな人が幸せならそれで良いワケ」
「...うん」
「だから無理やり雅紀とAを引き離そうとか、壊してやろうとか、そんな事は全然考えて無かったし今も考えてない」
「......」
「だけど、俺なら煮え切らない態度はとらないけどなってのは思う」

二人分の重さで沈んだベッド。
掛けてあるシーツを、キュっと掴む。

「好きなのかなー...とか、好きなのかもしれないー...とか。すっげぇズルいって思ったよ」

アハ、と笑った潤くんが片脚をベッドの上に乗せて身体を私の方へ向けた。

「俺なら言えるのに」
「......」

彼は、私の髪を一撫でして息を吐くように言葉を吐き出した。

「好きだ」

心臓がギュっと苦しくなったのは、潤くんが苦しそうな顔をしてるからだ。

「俺はAが好き」
「......」
「そんな顔で見んな」

どんな顔だか分かんないから、慌てて目を逸らす。

いや...いやいやいや...潤くん、本気で言ってんの...？
だって、あの潤くんだよ？歩けばみんなが振り向くような容姿で、その上中身も男前な潤くんだよ？
慰めてくれてるだけ？...にしては、ちょっとヘビー過ぎるけど...。

いやいやいや...でもだって、ほら、潤くんって理想が...

「......チョモランマなのに何で...」
「は？」
「えっ！？」

ヤバイ、考えてたコト口から出てた...！

「あー、お前が前から言ってるやつ？理想チョモランマって」
「......はい」
「俺、理想はAの言う通り高いと思うけど」
「...だったら私ってのは...」
「誰が、超絶美人で頭も良くてスタイル峰不二子級の女が好きだって言った？」
「...え？」
「ってゆーかA、全然そんなんじゃないし。その自覚はあるよな？」
「...ディスられてる？」

私が言うと、潤くんは

「だって俺、お前みたいな女が理想なんだもん」

ケラっと笑った。