PARACAGE 8th【ars】 (ページ22)

今日:32 hit、昨日:2 hit、合計:1,125,322 hit

267.傷口に塩。←12.3 ページ22

「あ、いや...指名...とは、ちょっと違うかな」

言葉を無くしてる私の隣で、ニノくんがボソッと呟く。
ちょっと待て待て待て、それどーゆー事。

「えっ...指名なの？指名じゃないの？どっち！」

そこ、結構重要だからね！？
ニノくんの襟元を両手で掴んでユサユサ揺らすと、首をゆらゆらさせながら「うわうわ酔うー」って目を閉じる。
手を離すと、彼は目を開けて「オレの三半規管の弱さ、舐めんなよ？」とフンッと偉そう。
でも涙目になってるから申し訳なくなって「ごめん」って謝っておく。

「何かね、インタビューしたいってオファーした出版社が自社の雑誌ですーってメンスト出したらしいの」
「...うん」
「したら、表紙が相葉さんだったわけ」
「...うん」

雅紀くんは実質メンストのカバーモデルだと言われてる位だからよっぽど昔のメンストじゃない限り、彼が表紙なのは当然だ。

「アキラは相葉さんがそこまで成功してるって知らなかったみたいで、すげぇ驚いたんだって」
「.....」
「そんでアキラね、昔相葉さんと同僚だったって事を話したらしいのよ」
「...そりゃ、そうゆー話になるよね...」

何だか大きな溜息が零れて、取り繕うようにアハと笑う。
ニノくんは、少し口を尖らせた。

「それでー...まぁ、アキラが何気無く相葉さんと久しぶりに会いたい的な事を言ったらしくて...」
「.....会いたい...」
「いや！違うよ？仕事としてね！A、分かってる？分かってるよね？」
「.....うん」
「...で、それ面白いって出版社の方が食いついて」

黙り込んだ私に「違う違う！面白いって、元カレと元カノの御対面が面白いって訳じゃないよ？」って傷口に塩を塗り込んで来るニノくん。
その事に気付いたのか「いや、違う違う違う！だって二人が付き合ってたとか、出版社の人は知らないし！」ってフォローなんだろうけど、更に塩。

何を言われても傷口を抉る事にしかならない状況。

「...何か、ごめん」

ニノくんもさすがに困った顔で頭をポリポリと掻いた。

「.....もうやめとく？」
「ううん、ちゃんと聞く」

彼が頷き、また話し始める。

「旧知の仲の二人がお互いに成功して再会ってのは企画として面白いだろうって事になったらしくて」
「うん」
「元々ライターがインタビューする予定だったのを相葉さんをインタビュアーに変えて、今回の企画になったみたいよ」
「.....」
「だから、指名じゃないわ！」

ニノくんは「ね？」って言うけど、私は頷けない。